本木雅弘、“ミスター・ラグビー”平尾誠二さんの中に感じた“ノブレス・オブリージュ”
思いがあふれる本木だが、平尾さんと自身は全然違うと語る。「自分が一番かけ離れているのは、自由度の高さですね。平尾さんは視野も広くて、自身と世界がつながっている感じというか、地中のマグマからジワジワ地熱があふれ出てきているような、包み込むような温かさを持った人ですよね。自分はやっぱり自意識過剰で、ネガティブ志向なんで。内向きに世界を狭めるから自由度も低いんですよ。抑え込んでいる分だけ、パンって反発したときに跳ねるパワーはあるとは思っているんですけど(笑)」。
「今回、病との向き合い方にも、平尾さんらしさを貫かれていたというのはこの物語の肝だと思うんですね。何事も受け入れて、きちんと感じて咀嚼して、自分で落としどころをつけていく。山中先生も家族もその意思を尊重し寄り添う。葛藤が伝わるというより、互いに思いやりが対流している。そういったものをそっと覗けるようなドラマじゃないかなと思います。山中教授曰く、ある意味最後の闘いが最も格好良かったと…。実際闘病生活のことはあまり公にしていなかった時間だけれども、そこにも平尾さんはちゃんとらしく存在していたっていうことを親しい皆さんや、ファンの方々にも確認していただけるような作品になっているんじゃないかと思います」。
『テレビ朝日ドラマプレミアム 友情 ~平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」~』(左から)平尾誠二役・本木雅弘、山中伸弥役・滝藤賢一(C)テレビ朝日
知れば知るほど、その人間力に感慨を覚えたという本木。40代半ばから始まった山中教授との友情についても、「あんな多忙で、すでに立場のあるお2人ですが、その分抱えている孤独は大きかったんじゃないかなと思うんです。世界的に注目されて影響力のある2人ですから、周囲に弱みや悩みを打ち明けるということも難しかったでしょうし、どこかで同じような経験をしているということに共感と親しみを感じそれで利害関係なしに、一気にギュッと絆が深まったんでしょうね。
そしてやっぱり、客観的に結果から見た話ですが、山中先生と出会い、病と向き合う伴走者になってくれたということは平尾さんにとっても救いであったわけで。その意味でも平尾さんが、自分らしく、魂を磨くというパフォーマンスを最後まで達成できるように、運命、神様が送った使者が山中さんだったんじゃないかなって。絆を育んだ期間は僅か6年間。もちろん平尾さんの歴史の中には、特別な出会いをした方は多いとは思いますが、最後の存在という意味で山中さんは選ばれた人だったのだと思います」。
(取材・文:編集部 写真:高野広美)
『テレビ朝日ドラマプレミアム 友情~平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」~』は、テレビ朝日系にて11月11日21時放送。