『キカイダー 』プロデューサー、ヒット狙う「デッドボールでもいいから塁に出たい」
1972年にテレビ放映がスタートし、一世を風靡した『人造人間キカイダー』が42年の歳月を経て、『キカイダー REBOOT』としてよみがえった。5月24日の公開を間近に控え、本作のエグゼクティブプロデューサーを務めるKADOKAWAの井上伸一郎氏と、東映の白倉伸一郎プロデューサーが、“キカイダー”について語る。オンタイムで見ていた『人造人間キカイダー』への思い入れが深いだけに、その話は熱かった!!
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――今回の『キカイダー REBOOT』は、井上プロデューサーから企画を提案したとお聞きしました。
井上:2011年11月に白倉さんと飲んでいたとき、「来年はキカイダー40周年ですが、東映的に何か考えているのですか?」とお聞きしたところ、「特にございません」とのことだったので、私のほうで企画書を作って提案し、翌年の春ごろから動き始めた感じです。しかし、そこから撮影に入るまでは、2年の歳月がかかりました。
白倉:簡単ではなかったですよね。今回、キカイダーを新しくすることがテーマではなかったですから。そもそも、今の人間が作ると、どうしても今風にならざるを得ないじゃないですか。そういう意味で、70年代当時の人が作ると1970年代風になるし、21世紀に作ると21世紀風にならざるを得ない。放っておいても必ず現代風になってしまうので、「キカイダーとは何ぞや」ということしか、考えていないんですよ。我々はロボットではないから、ロボットがどのように考えて振る舞うのか、自我を持ったときにどう思うのかなど、正直わからないんですよね。でも、そこから目を逸らすわけにはいかないので、考えて、考えて、考え抜いた結論というのが、“ロボットだって人間だ”ということ(笑)。
井上:逆に、ロボットだからこそ、人間の心を素直に書けたと思いますよ。自我がどこにあるのか迷ったり、悩んだりなど、これ、人間がやったら恥ずかしいというか、ストレートすぎて見ていられないところを、ロボットであるがゆえに一種のクッションとなり、寓話となり得た。ここが今回のキカイダーの優れた設定だと思います。これを仮面ライダーがやったら、たぶん見てられない。
白倉:見てられないですね。戦ってくれよ、もういいからって(笑)。
――今、仮面ライダーの話が出てきましたが、キカイダーは現在テレビで放映されていない作品。デメリットが多そうな気がします。
白倉:意外とないんですよ。日曜の朝7時30分のスーパー戦隊、朝8時の仮面ライダー、そこのコアターゲットは、低年齢層の未就学児から小学校低学年に軸足を置かなくてならず、もちろん、そのスピンオフとしての映画もそうです。また、ここ10年以上、仮面ライダーが頑張ってきたおかげで、劇場へ脚を運んでくれる方の裾野が広がってはいるのですが、テレビがある以上、その裾野のほうに軸足をずらすことはできない。どうやっても裾なんです。しかし、『キカイダー』は放送がないからこそ、これまで裾野という言い方で十羽一絡げにされてしまっていた、もう少しハイターゲットなところも狙えることができました。
井上:とはいえ、本作はオールターゲットの作品になっていますよね。大人が観ても、思春期の人が観ても、もちろん、親子連れの子どもが観ても楽しめるものにはなっている。だから、ある意味、オールターゲットの作品ではあるんですが、私が中学2年生のときに見て『人造人間キカイダー』が心に刺さったので、『キカイダー REBOOT』が10代の子に、そういうふうに感じてもらえる作品になってくれるといいなぁ、と。また、仮面ライダーやスーパー戦隊を卒業した子どもたちが、次に観る実写映画が少ないと常々思っていたので、本作が“次の実写”の役割を果たせるだろうと。