綾野剛、16歳・齋藤潤を絶賛 年齢&キャリア差にとらわれず2人で紡いだ“エモい関係”
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綾野剛
――綾野さんは今回の役作りについていかがですか?
綾野:聡実の成長、言い換えれば齋藤潤くんの成長が、この作品にとても大きな影響を与えてくれると考えていました。それは、監督を含め、現場全体が同じように考えていて、彼の魅力を映し出そう、描こうという想いが集結した現場でした。聡実=齋藤潤くんの心の動きが明確になるような環境や芝居を大切にしていました。
――撮影のための準備もかなりされたのですか?
綾野:クランクイン前に、かなりリハーサルも重ねました。でも、それは完成させていくためのものではありません。今回は、「いかに完成させずに成立させられるか」を考えた芝居でした。通常は、僕たちはセリフが入った状態で、自分たちの心を通して会話をする。それが(その会話ややりとりが)噛み合うことで、今のはうまくいった、成立したという体感を得る方法もありますが、本作は噛み合ってはいけない。そもそも『初めて会ったヤクザにいきなりカラオケに連れてこられた中学生』という状況で、両者の会話が嚙み合うはずがないのです。芝居的に噛み合ってはいけないから、不自然に間(ま)が空いたりする。そのどこまでも噛み合っていないところが、お麩みたいな。
――「お麩」ですか?
綾野:お麩って、初めは固くてお湯に入れるとほわっと(膨張)変化しますよね。そんな掴みどころがなく繊細な関係性を、この映画の中の狂児と聡実は、維持し続けなくてはいけません。でも、お麩も水分を吸い切った先にある形は、間違いなく元の形よりも大きく、柔らかくなっています。それがこの作品のたおやかさにつながっている気がします。
青春って、美しいばかりでなく、やや鋭利で、甘酸っぱいものだと思います。どちらかというと苦しくて残酷なことの方がストーリーテリングしやすく描かれますが、本作にはただひたすら温かくてたおやかな青春がある。狂児の存在を薄くし、他のキャストもフラットにいることで、聡実の感情がどのように動いているかだけが明確になる。山下監督が率先してそれだけを描くことを選択し、僕たちも共感し作っていきました。
齋藤潤
――なるほど。齋藤さんは、現場で綾野さんに演技について相談することはあったのですか? 現場でどのようなことを感じていたのかも教えてください。
齋藤:お芝居については不安しかなかったですね。ちょうど1年前に撮影したのですが、お芝居の経験があまりなかったですし、知識もなくて、ただただ無我夢中でした。今、剛さんが噛み合う、噛み合わないというお話をされていましたが、僕はまだ正解が何も分からないので、とりあえず一生懸命やってみて、噛み合った時に「あ、今のいい」と思う。でも後から考えると、何か違うと思ったりして…。リハーサルもやっていたのですが、先が見えなくなってしまって、心が折れたことがありました。
綾野:僕は(齋藤が)心が折れたとは感じなかったです。階段を1つ1つ確実に上っているのだと感じました。
――それは、どんな状況だったんですか?
齋藤:自分で何をやっているのか分からなくなってしまって、監督からのアドバイスの通りやってみてもどんどん分からなくなってしまって…。腑に落ちなくて、ダメかもしれないと思ってしまったことがあったんです。そんな時に、剛さんはずっと側にいてくださって、役者としてのモチベーションの保ち方など、いろいろなアドバイスを下さって、そのおかげで目の前にやるべきことが見えました。
――その時、綾野さんからどんな言葉をかけられたのですか?
綾野:そんな大したことではないですよ。「ちょっと外に風にあたりに行く?」くらいです。「ちょっと散歩しようか」って。でも、冬だったので、外に出たら「ごめん、寒かったね」って。噛み合わない演出を求められ、不安にさせてしまったかもしれないけれど、彼はあらゆることから一度も目を背けなかった。だから、僕から特別な事はすでに必要ではありませんでした。
映画『カラオケ行こ!』ファーストルック (C)2024『カラオケ行こ!』製作委員会
――では、劇中での狂児と聡実の関係性について、お二人はどのように感じていましたか?
綾野:シンプルに優しい関係。これに尽きます。立場や職業、年齢など関係なしに対等で、フラット。「ありがとう」も「さよなら」も言えるすごく素敵な関係だと思います。
齋藤:本当にその通りだと思います。気持ちが温かくなる二人で、きっと観て下さった方にもそう思っていただけるんじゃないかなと思いました。すごくエモい関係です。
綾野:エモい関係! ぜひそれでお願いします。