『攻殻機動隊』田中敦子、草薙素子は“近づきたい”から“相棒”に「素子と出会わなければいまの私はいない」
――1995年以来、長く素子を演じられていますが、一番大切にしていること、ブレないように意識していることはありますか?
田中:屈強なバトーやトグサ、公安9課のメンバーのリーダーとして戦っていくというのは、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』から変わっていないストーリーだと思います。それにふさわしい女性、タフでクールというラインは必ず守るような形で演技することを心がけています。
――核となる部分は共通でも、シリーズごとに素子の表現も変わっていますよね。
田中:そうですね。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』から『攻殻機動隊 S.A.C.』、そして『攻殻機動隊 SAC_2045』と、作品によってマイナーチェンジと言っていいか分かりませんが、私の演技を含めて変化していると思います。今後思わぬ素子と出会える楽しみもあるかもしれませんね(笑)。
――『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』での収録の思い出はありますか?
田中:そもそもオーディションに受かったということ自体、私にとっては奇跡だと思っていました。素子というキャラクターは当時としては、画期的なヒロイン像でした。それまでのヒロインと言えばかわいらしいものだったのですが、彼女は強くてタフでクールなんです。私はどちらかというと、キャラクターの人となりや、セリフを発する裏にある気持ちなどを考える方なのですが、素子に関しては、脳だけは生身で、あとは全身が義体化されているということと、年齢が大体40代ぐらいということしか情報として持っていなかったんです。そこはすごく難しかった。押井守監督からは「いろいろなことを経験して世の中を達観している女性として演じてほしい」とディレクションしていただいたのですが、少ない情報ながら素子に近づかなければと必死だったことを覚えています。
田中敦子
――そこから28年の歳月が流れましたが、当時からここまでロングシリーズになると思っていましたか?
田中:当時はそんなこと全く思っていませんでした。1995年に東京ファンタスティック映画祭で『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が上映されたのですが、お客さんたちの顔を見ると多くの人が口をポカンと開けているような感じで。まだ携帯電話もそれほど普及していない時代でしたから、すごく先取りした映画だったんでしょうね。でもアメリカでヒットして逆輸入のようにして日本でリバイバルヒットしたんですよね。
――草薙素子は田中さんにとってどんな存在ですか?
田中:素子に出会っていなければ、いまの私はいなかったと思います。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のときは、とにかく一生懸命素子を演じよう、少しでも素子に近づきたいと思っていました。それが収録を重ねるにつれて、演技をしているというよりは、私のなかに素子がいるような感じになったんです。まるで私の体を使ってセリフを言っているような感覚。特に『攻殻機動隊 SAC_2045』になってからは、常に横に素子がいて、相談しながら演じているような…相棒のような存在になりました。
(取材・文:磯部正和 写真:小川遼)
劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045』は、11月23日より3週間限定で劇場公開。