草なぎ剛、演じる際は「力まず構えず、できるだけ何も考えない」 イメージは“剣士”
――毎週放送後は大評判ですが、反響はどのように受けとめていらっしゃいますか。
草なぎ:公式のツイッターを覗くと、楽しんでいただいている様子が見えますし、TikTokにあげてくださる方もいて、6年前にはなかったような盛り上がり方が楽しいなと思います。それに、差し入れがすごくいっぱいあるので、評判いいのかな、みたいな(笑)。営業部の方から高級なハンバーグ弁当が来たんですけど、差し入れの豪華さによって、「このドラマ、ハネてるな」みたいなことは感じています。僕もこの世界はもう長いので、一番身近なところで、ドラマがどれだけハネているのか分かるんです(笑)。
――同業者や他の現場のスタッフから感想を聞くこともありますか。
草なぎ:キャイ〜ンの天野(ひろゆき)くんがツイッターでコメントしてくれていますが、他はあんまりないなぁ。だから、本当は評判いいのかなと疑心暗鬼になるけど、差し入れ見て「大丈夫だ」と。周りの人は僕に向かってつまんないなんて絶対言わないですからね。
――今日の味方が明日の敵になるなど、ハラハラの展開が続きますが、台本をどんな風に読んでいますか。
草なぎ:僕は基本的に自分のシーンしか読まないんですけど、今回はすごくエンターテインメントになっているので、犯人が誰なのか想像したり、近い人間も罠を仕掛けてくるのかなとか考えたりしながら楽しく読んでいます。『銭の戦争』も『嘘の戦争』もドキドキワクワクしたんですけど、今回はそこにもう1個「ワナワナ」を足している感じ。脚本の後藤法子さんはもしかしたらそこまで考えて、タイトルをつけているんじゃないかな。「ドキドキ・ワクワク・ワナワナの3段活用」みたいに、シャレもきかせているのかななんて思いながら、今回はどんなワナワナを仕掛けてくれているのか楽しみにしています。
――草なぎさんの演じる鷲津さんの冷静で頼もしいところと、無防備で危なっかしいところ、何を考えているか分からないところにもハラハラさせられますが、感情をコントロールされているんでしょうか。
草なぎ:正直、あまり何も考えていないんですよ(笑)。そのほうが観る人が想像してくれる気がするので、力んだり構えたりしないように、できるだけ何も考えないようにしています。
――考えず、構えずにいる、力の抜き方のコツはあるのでしょうか。
草なぎ:うーん……。僕の中にはイメージがあって、それは剣士なんですよ。剣士が刀を振るとき、筋肉モリモリの人が力いっぱい振る姿も強そうだけど、それよりもっと強いのは、それほど筋肉もなくて、でも、力を抜いて振る速さがものすごく速い気がするんですよ。僕は演技にもそんな感じが出せたらと思っていて。ガチガチに考えるんじゃなく、「何も考えてないんじゃないの?」みたいなイメージで動けたら、より凄みや迫力が出るんじゃないかと思うんです。
――そのイメージは、剣道経験者だからこそたどり着いたものですか。
草なぎ:自分で剣道をやっていたこともあるけど、僕、(井上雄彦の)『バカボンド』が好きなんですよ。宮本武蔵がたどり着く境地が、力を抜いて剣を振ることで。実際、力んじゃうとパフォーマンスが下がるんじゃないかなと思うんですよね。無の状態って結局、1番体がよく動くと思うんです。
もちろん緊張はするじゃないですか。何も考えていない状況を作っても、カメラを向けられると絶対に意識はしちゃうから、最初からいっぱい考えていてもしょうがないと思うようになったんですね。もちろん最初からそんな風に考えられたわけじゃなく、昔は台本を何回も何回も読み込んでいるときもありましたが、徐々にそうやって無の状態を作るようにしていくと、体がよく動く感じがつかめてきたんですね。だから今は、お芝居を剣士に例えて「強い剣士になるにはどうするの?」という自分なりに編み出した妄想で臨みます。僕、そんな風に妄想するのが好きなんです。
――お芝居について「天才」「憑依系」と言われることも多いですが、それをどう受け止めていますか。
草なぎ:うれしいけど、特に意識してないかな。お芝居は観る人が評価してくれれば良い話で、自分ではよく分からないし、分かっていなくて良いんですよ。むしろ役者って、ラッキーな仕事だなと思うんです。アスリートとかだと速さや高さ、距離など、数字で出てしまうけど、芝居に関してはそれがないから。だから難しいけど、逆に言うと有利じゃないかとも思うんですよ。僕はそういう基準のなさを逆手にとって、楽しむ。いろんな人間がいるのだから、みんな気にせず自分の考えた通りに楽しんでお芝居したら良いと思うし、楽しんだもん勝ちの世界だと思います。