若手から信頼厚い内野聖陽 「最高のパフォーマンスを出してもらいたい」現場での優しい気遣い
『完結編』では、山田演じる息子エドとホーエンハイム親子の複雑な関係性ながらも、互いを大切に思う絆というテーマも色濃く映し出されている。
「山田さんはすごく中性的な魅力があります。ボーイッシュでありながら、女性っぽいニュアンスも出せる。そこがとても素敵でしたね。あとは、山田さんは最後、若い姿のお父様を演じるわけですが、そのとき僕が演じていたお父様を継承しようとして、しゃべるスピードやテンポ感みたいなものを、すごく知りたがっていたんですね。研究熱心で、映画を観てくださるお客さんのために、作品を良くしようという努力がとても立派だなと思いました」と、山田の姿勢を称賛する内野。
一方の山田も親子の関係性を作るうえで、積極的に内野からコミュニケーションをとろうと歩み寄ってきてくれた姿勢に感銘を受けたことを話していた。近年、山田に限らず、内野と現場を共にした若手俳優が、内野の「作品を良いものにしよう」という姿勢に感銘を受けたと話す機会によく遭遇する。
「前提として、役者というのは作品の一部でしかないという思いはありますが、キャリアの若い方たちがパフォーマンスしづらい環境というのが、長年俳優をやっていると見えてくることがあるんです。それってもったいないですよね。皆さん才能ある人たちが集まってきているのに、ちょっとしたことで、その能力がうまく発揮できないのがもどかしい。やっぱり最高のパフォーマンスを出してもらいたいじゃないですか」。
だからこそ、本来の実力が出せるように、ちょっと背中を押せたら…という思いがある。
「あくまで押しつけがましくないようにですが、ちょっと先輩ぶってしまうことはあります(笑)。まあ、僕が若いころいっぱい失敗してきたから分かるんですよ。気合入れすぎて空回りしたり、スタッフとの意思疎通がうまくいかなかったり…。そのときに、ちょっとだけ『こうするといいかもよ』とか『ちょっと肩の力抜いてみたら』みたいなことを言っちゃうことはあります」。
こうした行動は「後輩のため」ではなく、あくまで良い作品にするため…と強調する内野。まさにそんな“恩着せがましくない”アドバイスが、後輩たちから慕われる理由なのではないか――。
「単純な話で言うと、僕ら役者というのはスポーツ選手みたいなもので。本番のために、ずっと準備や努力をしてきて撮影に臨むわけです。しかも、そのときのパフォーマンスがフィルムに焼き付けられる。そんなとき、悔いが残るような状況で芝居をすることって、非常に悲しいことだと思うんです。だったら、現場でやりづらいなと感じていることに気づいたら、言える人間が改善されるようにするのは当然ですよね」。