ともさかりえ、デビュー30周年 10代は「とてもしんどい時期だった」
今年デビュー30周年を迎えたともさか。浅野温子の娘を演じた1993年のドラマ『素晴らしきかな人生』(フジテレビ系)で初めての連続ドラマに出演し、1995年のドラマ『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)で演じた美雪役も大人気を博した。松尾からは「『すいか』(日本テレビ系)をDVDで観て、それがすごくよかった」と声を掛けられたこともあるそうだが、代表作として挙げられる作品を多数持つともさかにとって転機として思い出す作品は?
すると「『素晴らしきかな人生』での経験がなかったら、役者を続けていないんじゃないかなと思います」と告白。「撮影に入る前に1ヵ月くらいお稽古をしてもらったことなど、今でもよく覚えています。それまでお芝居の勉強をしたこともなく、右も左も分からない状態。素晴らしい役者さんとご一緒させていただき、皆さん、私が子どもだからといって容赦せずに向き合ってくださった。目の前にいる皆さんのお芝居に本当に感動したり、悲しくなったり、楽しくなったりして、演じているというよりも役と一心同体になった不思議な感覚があって。お芝居って本当に面白いな、やっていきたいなと思いました」と語る。
しかしながら、10代はしんどい時期だったと続ける。「10代の私には、“自分が働くことには、たくさんの人が関わって、たくさんの人が動いている”ということを背負うだけの度量がなかったのかなと。将来のことも考えていないような年頃で、ただお芝居が好きという気持ちだけで始めてしまったので次第にいっぱいいっぱいになってしまって。またSNSのない時代でしたが、いろいろな形で誹謗中傷を浴びることもあり、そういったことにもダイレクトにダメージを受けてしまった。参ってしまった時期があります」。
さらにともさかは、「こうして振り返ってみるとありがたい経験ばかりで、もっと楽しめばよかったのに!と思うんですけれど。働く意味をきちんと感じられるまでは、ずっとしんどかった」と苦笑いを浮かべる。転機となったのは長男の出産で、「子どもを産んで、マインドはものすごく変わりました。それまでは生活と仕事がずっと地続きにあるようで、どこで切り替えたらいいのかが分からなかった。それもしんどかった要因の一つだと思うんですが、子どもを養う親になったことで、働くことをそのまま受け止めることができるようになりました。帰ると、自分以外のことでやらなければいけないこともたくさんあるので、物理的な大変さは増えたけれど、精神的には楽になりました」と生活者としての軸ができたことで心が軽くなったといい、人生経験を重ねることで「だんだん面白がれる余裕が出てきた気がして」とにっこり。
「お芝居をすることは、苦しいことでもあります。やる前からいろいろなことを想像して不安に思ったりするタイプではありますが、そういったことも面白がりながら、進んでいけたらうれしいです。お客様と時間を共有できる喜びは、格別なものがある。だからお芝居をやめられないのかな?と思っています」と輝くような笑顔を見せていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
東京成人演劇部vol.2『命、ギガ長スW(ダブル)』は、東京・ザ・スズナリにて3月4日~4月3日、大阪・近鉄アート館にて4月7~11日、福岡・北九州芸術劇場 中劇場にて4月15~17日、長野・まつもと市民芸術館 実験劇場にて4月23~24日上演。