チェ・ミンシク、映画人生を振り返り「以前にも増して仕事を愛するようになった」『破墓/パミョ』ロングインタビュー
チェ・ミンシク
――よく、俳優さんによって、本番に入る直前まで、ぜんぜん別のことをしていても、本番になると、急にスイッチが入る人がいたり、本番前には集中している人もいたりすると聞きます。チェ・ミンシクさんはどのようなタイプですか?
チェ:俳優さんによって各自のスタイルがありますね。私の場合は、撮影に入るまでは、「小雨に服が濡れているような状態」とでも言いましょうか、ずーっと役について考え続けてはいるんですね。
試験勉強みたいに、根を詰めて集中しているという感じではないんですが、頭の中で、ずっと考えが巡っている状態なんです。
この役は、なぜこんなことを言ったんだろうか、なぜあの人を殺してしまったんだろうか、なぜあの人を裏切ったんだろうか、この人は今までどんな人生を歩んできたんだろうか…などということをずっと考えています。
作品の中の出来事っていうのは架空の出来事ですよね。キャラクターもまた架空なんですけど、そのキャラクターを信じて演技をするためには、その人物を深く理解する必要があると思います。多くの人たちが想像するキャラクターと違うキャラクターを無理に演じようと思っているわけではないんですけど、細かいところを見逃してはいけないとも思います。
演じる人物のことを、この人はいい人だ、悪い人だと簡単に分けてしまったりすることはせずに、でも逃してはいけないことは逃さないように、そういうことが「小雨に服が濡れているような感じ」なんですけれども、ずっと考え続けて現場にいるんです。
どうしてこんな行動をしてしまったのか、どうしてこんな悲劇的な状況を招いてしまったのか、どうしてこの女性を愛しているのに、愛していると言えなかったのか…、そんなことを考え続けているんですけど、周りの人からすると、遊んでいるように見えているようです(笑)。
チェ・ミンシク
――今回の『破墓/パミョ』で演じた風水師のサンドクについては、「小雨に濡れているように」どんなことを考えていたのでしょうか?
チェ:まずは、サンドクという人物の平凡さに着眼点を置いたんですね。風水師というのは、映画の中にも出てきますけど、お墓を作るのに最適な場所を選んだり、この土地はどのような土地かということを見極めることができる人なんですね。
でも、私が演じた風水師は、達人ではあるけれど達人には見えないような、その辺の道端を歩いていて、ちょっとこの道を見てみましょうか、というような、そこらへんにいるおじさんのような感じにしたいと思ったんですね。
でも、そんな平凡さの中にも非凡さもある人物として表現したいとも思っていました。平凡には見えるけれど、自然のパワーも感じることができて、気の流れも見極めることができるという感じにも見えるように演じなければと思いました。
サンドクは、常に自然のことを研究していて、自然と人間について考えてきた人物なんです。で、このようなことは、一つの学問でもあり、哲学でもあると考えています。
朝鮮の風水では、『背山臨水』と言って、後ろに山があって、前に川があるところがいい土地だと言われているんです。これは、風水で言われているだけでなく、科学的にも言えることだと思うんです。
後ろに山があれば、木々があって実がなります。冬にはその木が冷たい北風を防いでもくれるでしょう。目の前に川があれば、畑や水田も作れますから、穀物を育てることができます。なので、後ろに山があって前に川があるということは、風水の上でいい土地でもあるけれど、それは人々が生きる中で得た教訓や知恵でもあると思います。
知恵であるということは、学問であり哲学なんです。そういう視点を持っているのがサンドクなわけで、その視線には深いものがあり、そういうところを逃さないようにと思いながら演じていました。