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『ゆとりですがなにか』はすべてを“受け入れる”ドラマだった レギュラー放送から7年、映画で描くものとは

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■SP版でもやっぱり“女性”の描き方がすごかった

 SP版が放送された2017年といえば、コロナ禍がやってくることなど誰も知らず、2020年に開催されるはずだった東京オリンピックに向けて国内が浮足立ち始めていた頃。『ゆとり』の世界でもその足音は迫っていて、せっかく坂間が会社を辞めて継ぐこととなった坂間酒造は、モノレール建設のために立ち退きを迫られている。まりぶの父・“バブル世代”麻生(吉田鋼太郎)は再びの不動産バブルを前にギラついている。

 そんな中で注目したいのは、やはり今回も“女性”の話。レギュラー放送時には、出世株として期待を背負い、バリバリ働いていた茜だったが、結婚を機に坂間家に入った。坂間と2人でゆっくり話す時間もなく、すれ違っていく。そんな折、久しぶりに会った山路から坂間が言われたのは「茜ちゃんにとって、坂間家は家族じゃなくて“社会”なんだよ」という一言だった。

映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』場面写真(C)2023「ゆとりですがなにか」製作委員会
 女性のキャリア形成が叫ばれて久しいが、生物として、子どもを産むことは女性にしかできないことは過去も未来も変わらない。自分の意思で退職した茜だが、どこかまだ“働きたい”という気持ちは残っているようだった。子育てを経てその気持ちはどうなったのだろうか。その答えは劇場版で明らかになるだろう。

 また、まりぶの中国人妻・ユカ(瑛蓮)の「時給ヨリ延長保育代ノ方ガ高クツクヨ! 日本死ネ!」という、放送当時の流行語を交えたこのセリフにも、子育て支援や女性の社会復帰の難しさがにじみ出る。当時からこれらの問題について状況が良くなった実感は正直ないが、リアルすぎる女性キャラが多い本作。劇場版ではなにか答えを導き出してくれているのかもしれない。

■ゆとりもさとりも、Z世代も受け入れて――劇場版、そしてその先へ

 本日から公開される劇場版では、働き方改革、テレワーク、多様性、グローバル化、コンプライアンスといった令和らしい時代の波がゆとり世代のもとに。そして新たな“Z世代”も社会の仲間入りをした中、坂間・山路・まりぶはまたも人生の岐路に立っている。“人生の岐路”とは言うが、人生は常に岐路なのかもしれないと、彼らを見ていて思う。これからさらにさまざまな新世代が生まれても、『ゆとり』の主人公たちは一生ゆとり世代だし、筆者は一生さとり世代だ。今回の映画化で、新しい世代を受け入れながら、人生の選択を時に間違えながらも繰り返していく主人公たちの姿をまた見ることができるのはとても嬉しい。欲を言えば、これからも新たな世代がやってくるたびにまたもがく彼らの姿を見られることを願う。(文:小島萌寧)

 映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』は公開中。

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