その熱いストーリー展開を何倍にも盛り上げるのが、数々のアスリートの登場曲としても使用される名曲の数々だ。シリーズを代表するSurvivorの名曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」に始まり、アポロ対ドラゴ戦の前にド派手に披露され、一度観たら一生忘れないインパクトを残すジェームズ・ブラウンのゴキゲンすぎるナンバー「Living in America」。愛妻エイドリアンの反対を押し切りドラゴ戦に挑もうとするロッキーの逃げ場のない葛藤を表現した「No Easy Way Out」。静かな闘志とともにソ連へと向かうロッキーの孤独な旅路を彩る「Burning Heart」。前述した“対比トレーニング”を盛り上げるスコア「Training Montage」に加えて、ついにエイドリアンもソ連に駆けつけたトレーニングシーンの最高潮を名曲「Heart’s on Fire」があまりにも熱く盛り上げる。しかもこの名曲たちは、本編でさりげなく流れるのではなく、「それでは聞いていただきましょう!」のごとく、大音量かつほぼフル尺で流れるという大胆さ。本作は、シリーズで唯一あの有名なロッキーのテーマ「GONNA FLY NOW」が流れない異端作品なのだが、それを補って余りある名曲たちが揃っており、この映画を傑作たらしめる重要な要素になっているのだ。
『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』より (C)2021 Machi Xcelsior Studios Ltd. All Rights Reserved.
わざわざ35年も経って本編を再構成するならば、スタローン本人がコメントしているように、よりドラマを重視した構成になるはずだ。映画を冷静に見返してみれば、たしかにちょっとゴキゲンがすぎるシーンがあることは否めない。MTV時代の映画とはいえ、劇中で何曲もほぼフルサイズで楽曲を流す(「Heart’s On Fire」に至っては2度流れる)のはやりすぎかもしれない。でもファンはそんなオリジナルの『ロッキー4』をこれまで愛してきたし、今でも愛している。過去に名作を改変した結果、改悪になってしまった事例は多々ある。『ロッキー4』は一体どうなってしまうのだろうか。
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