肉体だけじゃない! 俳優としての器用さも持つ、ドウェイン・ジョンソンのすごさ
たとえばジョンソンが巨大ゴリラと肩を並べ、巨大ワニや巨大狼と激闘を繰り広げる『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018)を思い出したい。世に怪獣映画は数多あれど、そこに登場する人間たちはいつでもモンスターたちの足もとで右往左往するばかりだ。主演俳優が怪獣と互角のタッグを組み、一緒に戦ってみせる作品がどれだけあっただろうか。「巨大ゴリラと肩を並べ」と普通に書いてしまってから、それをやってのけて一切の違和感を覚えさせないあたりにジョンソンの異常性があると気づく。
巨大ゴリラと肩を並べるドウェイン・ジョンソン 『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018)より 写真提供:AFLO
異常といえば『ランペイジ』にはあまりに異常な展開があった。同作の中盤で、ジョンソンは脇腹を撃たれて倒れてしまう。主人公がそれだけの目に遭えば物語に少なからぬ影響がありそうなものだが、この人はそれから2分ほど後に「急所を外れたから大丈夫だ」と言い切って、戦線に復帰する。外れたも何も脇腹はだいたい急所だと思うのだが、何しろドウェイン・ジョンソンのことだからその説明で納得するほかないのである。またこの傷が、その後劇中において何かしらのハンデになるかといえばそうでもないから思わず慄然とする。
というか土手っ腹に銃弾を受けてピンピンしている主人公…という描写の異常性にやっと気がついたのは、何となく『ランペイジ』を二度めだか三度めに観直していたときのことだった。つまり少なくとも初見において、自分はそれをごく当たり前のこととして受け入れていたのである。まあジョンソンであればそういうこともあるだろうと。
ここで脇腹を撃たれたのが、誰でもいいがたとえばティモシー・シャラメであったなら、と考えてみる。シャラメはもちろん素晴らしい俳優だ。しかしシャラメに「急所じゃないから大丈夫だ」と言われても、大丈夫なことあるか! すぐ入院しなさい、と誰しも言わざるを得ないだろう。翻ってジョンソンはどうか。ついさっき結構な大けがをしたことさえ観客に忘れさせてしまう。あるいは大勢に影響がなさすぎて、物語上そもそもけがを負う描写すら必要だったのかどうか考えさせられる。行き過ぎた荒唐無稽をふと受け入れさせる。そんな理屈を超えた強靭さを、ドウェイン・ジョンソンという存在はその全身から発散させているのだ。これはやはり他に類を見ない存在だと思う。ジョンソン現在49歳。硬軟をいっさい問わず、どんな役柄でも必要以上に楽しませてくれる存在として、あと100年ぐらいは頑張ってほしいものである。(文・てらさわホーク)
映画『ジュマンジ/ネクスト・レベル』は、フジテレビ系「土曜プレミアム」にて4月30日21時放送(15分拡大)。