のん、宮藤官九郎は“小学生のような天才” 記憶に残る『あまちゃん』打ち上げでの言葉
◆初舞台で感じた演劇の楽しさと怖さ
のんにとって本作は2回目の舞台出演。2年前の初舞台『私の恋人』では、渡辺えり、小日向文世という大ベテランに胸を借りた。「日々稽古で、1ヵ月間みっちりと皆さんと演技を交えながらシーンを作っていくので、それがすごく刺激的でした。本読みから始まって立ち稽古、リハーサルと、こうやってどんどん練られていくんだっていう過程が面白かったですね。映像の色合いとかカット割りのムードとかで空気を作るのではなく、自分自身からその空間を作っていかなきゃいけないというのがすごく大変なんだけど、楽しいなって思いました」と振り返る。
また、「ずっと全身を見られているのでそれがすごく怖かったです。身体表現として、素になっているように見えないようにしていなきゃいけないのが、こんなに難しいんだなって打ちのめされました。それが怖くもあり、楽しい部分でもありましたね」とも。
舞台や音楽活動など、ライブ活動にも積極的なのん。その魅力を尋ねると「別々の人間が集まっているんだけど、今みんなで一緒に笑ったよねとか、みんなで一緒にグッときたよねっていうのを肌で感じられるというところ。おのおのの解釈で観ているかもしれないけど、演じている側、ステージに立っている側でお客さんと同じ空間を共有できるというのが、生の舞台や音楽ライブにしかない楽しさだと思います」ときっぱり。
今回初登場となるPARCO劇場は、「パルコさんのプロデュースで絵の展覧会をしたりとつながりもあったので、出たいなって」と憧れがあった。PARCO劇場も作品の舞台も両方渋谷となるが、のんにとって渋谷という街は、「10代で東京に出てきたころは、人が多いなってすごく圧倒されたり、“こんな感じなのか”と思っていたのとギャップがあったりしました。のんになってからは、展覧会やNON THE CORNERというカフェのコラボ、渋谷のライブハウスでの初のワンマンライブとか、ゆかりができてきて。渋谷の街には、自分が表現するときに、一番最初に助けてくれているところみたいな、仲間みたいなイメージがありますね」と語る。
◆60歳になっても子ども心を失わず、創作意欲が止まらない大人になりたい
今回の役では超能力が使えるという設定だが、もし何か超能力が使えるとしたら、どんな超能力が欲しいか尋ねてみた。「う~ん。人の心が読める超能力が欲しい。悪いこと考えてるなら悪いこと考えてるで、それが分かりたいなって思いますね。役者として役のことを考えたり、物語の中の人物について読み解いたりするのはすごく発想が湧くんですけど、普段対話するときに、話下手っていうのもあって、人の顔色見てないのか、どう思ったんだろう…っていうのをすごく考えちゃうほうなので…。役者のためっていうよりは普段の会話のために読めるようになりたいと思います」と照れくさそうに笑う。
本作の舞台となる2055年にのんは62歳。「それこそ、宮藤さんとか、宮藤さんは60歳じゃないですけど(笑)、渡辺えりさんみたいに60歳になっても、子ども心が消えていなくて、ばりばり創作したりとか、創作意欲が止まっていない大人になっていたらいいなって思います」。そう目を輝かせて答えるのん。今回の舞台でも、さまざまなことを吸収して、その憧れの姿にまた一歩近づいていくにちがいない。(取材:編集部 写真:高野広美)
大パルコ人(4)マジロックオペラ『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』東京公演はPARCO劇場にて8月9日~31日、大阪公演はCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて9月4日~12日、仙台公演は電力ホールにて9月15日~17日上演。