水川あさみ、大きな選択だった事務所独立 貫く思いは「常に新しいチャレンジをしたい」
今年は出演した映画が5作公開となるなど、年齢を重ねるごとにますます女優としての輝きを増している水川あさみ。32歳で命を絶った歌人、萩原慎一郎による歌集を映画化した『滑走路』では、キャリアと結婚生活に不安を抱える女性の“心の叫び”を表現した。10代からスタートさせた女優人生は「選択の連続だった」という彼女だが、「常に新しいことにチャレンジしていきたい」と真摯(しんし)かつ、貪欲に突き進んでいる。そんな中でとりわけ大きな選択だったと明かすのが、「独立と個人事務所の設立」。「“自分でその道を選んだ”という自信があれば、きっと後悔はしない」という清々しい仕事論までを語ってもらった。
【写真】柔らかな笑顔を見せる水川あさみ
■誰もが不安や葛藤、悲しみを抱えて生きている
萩原慎一郎が、苦難の中に光を見つけながらつづった『歌集 滑走路』をモチーフに、オリジナルストーリーとして映画化した本作。いじめ、非正規雇用、過労、自死など現代を生きる人々が抱える葛藤と、それでもなお希望を求めてもがく姿を鮮烈に描く。
人生の“痛み”に目を向けた、深い人間ドラマだが、水川は「明るい作品が続いていたときに、本作のお話が舞い込んできた。タイミング的にも『今、これをやれ』と言われているような気がして、ぜひやってみたいと思いました」とオファーを受けた心境を吐露。「誰もが心に不安や葛藤、悲しみを背負いながら生きていると思います。そんな気持ちに寄り添ってくれるような作品になると思いました」と本作に漂う不穏な空気とともに、温かさも感じたという。
映画『滑走路』場面写真 (C)2020 「滑走路」製作委員会
水川が演じるのは、30代後半にさしかかり、切り絵作家としてのキャリアに悩み、子どもを欲しながらも、夫との関係に違和感を感じている女性、翠。「翠は、いろいろな女性の悩みを集約して、代表しているような人物。悩んだり、不安に思っている人たちが共感してくれるような女性として演じられたらと思っていました」と覚悟して、飛び込んだ。
■理想の夫婦像は?「適度な秩序と礼節を持ち、思ったことを言い合えるような夫婦」
劇中の夫婦については、「日常を過ごす中で、翠は夫に対して、無意識のうちに違和感が積み重なっていってしまう。そういったことは、きっと誰しもに起こりうること」と語る。
映画『滑走路』場面写真 (C)2020 「滑走路」製作委員会
「翠が悩んでいると、夫はいつも『翠はどうしたい?』と尋ねてくれる。それは翠のことを思って、彼なりの優しさから出た言葉だったと思うんです。翠も結婚生活の初めの頃は、夫のそういうところが素敵だと思っていたはず。でもだんだん、翠の中に自我が芽生えてきたり、キャリアを重ねていく中で、夫の言葉も違ったように聞こえてしまったりする。それは夫にも言えることで、同じ意味合いでその言葉を発することができなくなってしまう。少しずつ歯車が狂って、それが大きな溝になってしまう」と2人の関係が静かに壊れていく過程を見つめる。
映画『喜劇 愛妻物語』では、夫を罵倒する妻を演じた水川。その夫婦像とはまったく異なるものだが、「『喜劇 愛妻物語』の夫婦は、ああなったらもう怖いものはない!というような夫婦(笑)! あんなにコミュニケーションをとっている2人って、いないと思うんです。ある意味、理想の夫婦と言えるのかも」とニッコリ。
自身の考える理想の夫婦像は、「やっぱり、なんでも言い合える関係がいいとは思います」と話しつつ、「適度な秩序と礼節を持ちながら、思ったことを言い合えるのがベストですね。夫婦とはいえ、マナーを怠ったり、思いやりを失ってしまってはいけないのかなと思っています」と思いやりがポイントのようだ。