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「我々はたまたま生かされているだけ」――三浦友和、父の実家を襲った天災 セリフに思いを重ねて

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三浦友和、『風の電話』インタビュー
三浦友和、『風の電話』インタビュー クランクイン!

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 俳優の三浦友和が、映画『M/OTHER』(1999)以来、諏訪敦彦監督と20年ぶりにタッグを組んだ最新作『風の電話』で、震災によって全てを亡くした少女・ハルに救いの手を差し伸べる中年男性・公平をリアルに好演している。「決して押し付けがましくなく、素直な気持ちで観られる作品」と太鼓判を押す三浦は、過去に実家を襲った台風被害を重ね合わせながら、本作に込めた思いを真摯(しんし)に語った。

【写真】笑顔がすてきな三浦友和、インタビューカット

 本作は、東日本大震災以降、“天国に繋がる電話”として、3万人を超える人々が訪れている電話ボックス<風の電話>をモチーフにした初の映像作品。広島から故郷の大槌町へ、家族を亡くした少女ハルが、傷ついた心を抱えながら、見知らぬ町を旅する姿を追いかける。『ブラック校則』などで注目の新人女優・モトーラ世理奈が主人公・ハルを演じるほか、三浦、西島秀俊、西田敏行、山本未來ら豪華キャストが彼女を旅先で励ます重要な役で登場する。


 シナリオなしの即興演出という独自の手法を持つ諏訪監督。久々にタッグを組んだ三浦は、こう振り返る。「はじめは脚本が用意されていたので、『今回は脚本ありきで行くのかな?』と、最初はちょっと驚きました」。ところが、次に三浦に送られてきたのは、諏訪監督が手を入れた構成台本。「なんというか、背骨を残して肉を削ぎ落とした感じ。セリフのやりとりが一切省かれていたので、結局、現場で作り上げていくことになったのですが、ただ、撮影が終わると、脚本がなかったとか、アドリブでやったとか、そういう印象が不思議と残らない。監督のやりたいことに我々がいつの間にか包み込まれている、そんな感覚でしたね」と感嘆する。

 劇中、三浦が演じる公平は、道で倒れていたハルを助け、自宅で静養させるが、どちらかといえば、振る舞いはぶっきらぼう。過剰な優しさは見せず、彼女の気持ちにも安易には踏み込まない。ただ、ひたすら「食え、とにかく食え」と執拗に食事を勧める。「諏訪さんの構成台本に、『人間は結局、食って、出して、寝る生き物』といった感じのことが書いてあったんですが、僕も本当にそうだなと思って。元気がないとき、傷ついているときって、まず食欲が無くなりますが、そういうときこそ食べないとエネルギーが出ない。人間という生き物の原点ですよね」と大いに共感する。


(C)2020映画「風の電話」製作委員会

 さらに三浦は、「脚本にセリフとして『食え!』と書いてあったら、あんなにしつこく言わなかったと思います。モトーラさんの表情を見ていたら、なぜか自然と感情が湧き起こり、何度も言いたくなったんですよね(笑)。彼女の優れているところは、言葉がないところでも受けてくれるし、ちゃんと“何か”を発している。試写を観たとき、『久々にすごい女優さんが出てきたな』と素直に思いました。これからいろんな方と仕事をすると思いますが、彼女の資質をちゃんと見抜ける監督さんと出会ってほしいなと切に願いたくなる、そんな女優さんですよね」と絶賛した。

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