洋邦問わず公開続く実話系映画 実話ゆえのメリット・デメリットは?
さらに、こう付け加える。
「実在する(した)人物を映画化する際、当事者やその周りの人から反発を受けるということもあります。元来協力を得ないとうまく映画化されないはずなのに、家族や遺族、周囲の関係者と契約の問題や内容に対する問題で上手くいかない場合も多いんです。最近だと『スティーブ・ジョブズ』などは、彼の属したapple社から協力が得られなかった点では、宣伝・興行についてもマイナスな面と言えるでしょう。それだけに限らず、事実と異なると制作側と論争になることも多く、それはドラマ性を高めるために、その出来事や人の良い側面だけを描いており、悪い側面や都合のよくないところまで描ききっていないから。その結果、凡庸な作品になってしまう」。
それでも、洋邦問わず、実話系映画は多く製作されている。
「洋画の場合は感動作だけでなく、シリアスな政治ものから緊迫の戦争・軍事作戦もの、さらにはサクセスストーリーなど、実話系も幅が広いため、“実話系”とはいえど、マンネリ化しない(前述宣伝マン)」。
また、邦画会社の関係者は、こう話してくれた。
「実話の知名度の大きさを考え、それが泣けるとあれば、映画化GOサインは出やすい傾向にあります。というのも、日本では、やはり“涙”がポイント。感動作にしたほうが、女性のウケがよく、ヒットしやすいため、どのようなジャンルの実話系であっても、“涙”が絡んだ作品が多くなりますよね。また、テレビ局が製作委員会に入っていると、その局で人気を博したドキュメンタリーが映画となり、それはやはり、涙モノが多いんですよ」。
実話系映画とフィクション映画、様々な違いはある。だが、「時流や人々の興味からそれてはいけない」との宣伝マンの言葉は、実話、フィクションともに共通だろう。望むのは、人々の興味や好奇心を掻き立てる作品だ。