1999年公開『マトリックス』の衝撃 バレットタイム大流行、DVDミリオン達成…ブームを振り返る
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●驚異の映像革命(2)カンフーとワイヤーアクション
そんなデジタルの凄さに加え、もう一つこの映画を象徴するのがワイヤーアクションとカンフーというアナログ要素だ。
90年代後半、香港からジョン・ウー監督がハリウッドに進出、さらにジャッキー・チェンもハリウッドに進出し『ラッシュアワー』(1998)が大ヒットするなど、ハリウッドはまさに香港印のワイヤーアクションと銃撃戦、カンフーが席巻していた時代だった。
映画『マトリックス』(1999) 写真提供:AFLO
そんな中、本作は“人類と機械の戦争を描くSF映画”という枠組みの中に、それらの要素を入れ込んだ。ジョン・ウー作品を彷彿とさせる激しい銃撃戦に加え、ハリウッド俳優たちが体当たりで演じたカンフーは、厳しいトレーニングの成果を感じさせる納得の出来栄え。そこにスローモーションとワイヤーアクションというアナログな撮影方法を用いながらも、あくまでSF的かつ斬新な画作りは外さない。
香港映画のレジェンドであるアクション指導のユエン・ウーピンによる手腕と、監督のビジュアルイメージが見事に合致した結果と言えるだろう。香港テイストとハリウッドSFが融合した『マトリックス』の大ヒットによって、『チャーリーズ・エンジェル』(2000)などに代表されるように、ハリウッド映画のガン&カンフーアクションムーブメントはさらに拍車がかかっていく。
●パンフレットは飛ぶように売れ、DVDは100万枚突破の爆発的ヒット
ピカピカした豪華絢爛な外観だが、デザインを優先しすぎて異常に読みづらい仕様だったにもかかわらず、『マトリックス』の劇場パンフレットは飛ぶように売れた(筆者の記憶では60万部以上売れたはず)。そしてブームは劇場公開時だけにとどまらず、翌年発売されたDVDも爆発的な売り上げを記録する。当時は高価で、まだまだ普及しているとは言い難かったDVDの再生機だが、2000年3月4日にDVD再生機能搭載のゲーム機「プレイステーション2」が発売。それに合わせるように3月17日に発売された本作のDVDは売れに売れ、プレステ2の売り上げにも大きく貢献。相乗効果で日本におけるDVD初の100万枚を突破した記念すべき作品となった。そして、あまりに急速に普及しすぎたため、再生機によってはちゃんと再生できないトラブルが続出したのも、今となってはいい思い出である。
黒バックに黒字のページも 凝ったデザインの『マトリックス』パンフレット(筆者私物)