15億人が同時体験 収益140億円 実際すごかった『ボヘミアン・ラプソディ』“ライブ・エイド”
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■映画版のすさまじい再現度 「ピアノの上の紙コップ」まで瓜二つ
ピアノで弾き語り中のフレディ・マーキュリー (C)AFLO
クイーンは持ち時間の20分間で、全出演アーティスト中最多となる全6曲を披露した。映画本編では、「ボヘミアン・ラプソディ」を皮切りに、「RADIO GA GA」「ハマー・トゥ・フォール」「伝説のチャンピオン」が映し出されるが、この再現度がすさまじい。映画公開時に、実際のライブ・エイドと映画の比較映像が公開されて話題となったが、フレディ役のラミ・マレックらの一挙手一投足、機材の種類や配置はもちろん、フレディが弾くピアノの上に置かれたコーラの紙コップの位置や数、タバコの吸いがらなどの細部に至るまで、完全コピーを果たしているのだ。
実際のライブと同じく「愛という名の欲望」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を含んだ6曲が撮影されており、6月6日には、ブルーレイ特典として収録されているこのライブ映像をプラスした特別編集版『ボヘミアン・ラプソディ ライブ・エイド完全版』が、BS日テレで放送される。
■オスカーをもたらしたラミ・マレックの熱演
ラミ・マレック演じるフレディ・マーキュリー 写真提供:AFLO
ラミ・マレックは、フレディ役が決まった際に、立ち尽くしてしまうほどの興奮とすさまじいプレシャーに見舞われたという。だが、完全になりきるために、ムーブメント・コーチと呼ばれるトレーナーと共に、目配せや首の動かし方に至るまで、フレディらしいあらゆる仕草を身につけていった。また、フレディの特徴でもあった多彩で華やかな衣装の数々を再現するために、50時間を衣装合わせに費やしたという。
華麗なるロック・スターでありながらも、自らの複雑な出自やパーソナリティにも苦悩していたフレディを体現し、ラミは見事、第91回アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた。
■改めて感じるクイーン、そしてライブの魅力
ライブ・エイド(1985) (C)Zeta Image
サウンドトラック盤を含めたクイーンの既発タイトルの総売り上げは、2018年以降で日本だけでも200万枚(パッケージとデジタルの合算 ※2021年4月現在)を突破し、「日本ゴールドディスク大賞」において、クイーンは2019~2021年の3年連続(通算4度)で、洋楽部門の「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に輝いている。映画の大ヒットによって、新たなクイーン・ブームが到来しているのは間違いない。
“クイーン初心者にとっての入門編”、そして“熱烈ファンにとってのベスト盤”としても、『ボヘミアン・ラプソディ』は唯一無二の1作だろう。だが、いま観て改めて感じるのは、クイーンそのものの輝き以上に、観衆の1人となって目の前の音楽に浸るという“音楽ライブ”ならではの体験の尊さだ。数千人から数万人が密集し、音楽とひとつになって手を叩き、歓声を上げ、そして歌う。私たちは、いつかあの体験を再び味わうことはできるのだろうか。本作を観ながら、そんな思いも抱かずにはいられない。(文:村上健一)