「ミラーライアーフィルムズ」山田孝之、阿部進之介×野田聖子議員が語る“これからの映画産業の在り方と可能性”とは?
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短編映画制作プロジェクト「ミラーライアーフィルムズ」の懇談会が6月下旬に都内で開催され、同企画幹事代表の伊藤主税氏(株式会社and pictures代表取締役)、プロデューサーを務める俳優の山田孝之、阿部進之介、そして衆議院議員の野田聖子氏が参加。日本のエンターテインメント業界の発展に対しての意見交換を行った。
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野田議員と「ミラーライアーフィルムズ」の関係性
クリエイター育成発掘を目的とする短編映画制作プロジェクト「ミラーライアーフィルムズ」(以下、mlf)。伊藤プロデューサーは地方創生に関する政策に深くかかわってきた野田議員とmlfの関係性について「野田先生には、愛知県蒲郡市の全面協力で撮影された『ゾッキ』(竹中直人、山田孝之、齊藤工監督)のときからずっと温かく見守っていただき、その後も定期的にご挨拶や、プロジェクトの説明をさせていただいています」と語ると、野田議員は「最初に『ゾッキ』の話を聞いたとき、たまたま私は映画議員連盟の会長を国会でしていたり、地方自治を担う総務大臣も経験していたので、興味がありました」と当時を振り返る。
ただ最初は「地方創生」をテーマにした映画ということで「あまり面白いものではないのかな」と思ったという野田議員。しかし映画を観ると「衝撃的で、打ちのめされました。『ゾッキ』依存症になって、漫画も買ったぐらいハマったんです」と話し、続けて「地方創生の映画というと、どこかきれいごとで、つまらないものという既成概念をいい意味で打ち壊している作品でした。わざわざ地方を売り込むのではなく、コンテンツに引き込まれるうちに地方の様子が分かって、興味を持つことができる。そんな作り方が魅力的で、なにか協力できればと思ったんです」といきさつを述べる。
野田議員の言葉に阿部も「嬉しいですね」と笑顔を見せると「どうしても、その地域の特産物などを直接的にアピールするようなわかりやすいpr映画になってしまいがちですが、mlfはクリエイターが自由に作れる環境づくりを意識しているので」とあくまで地域創生がメインではなく、作品の表現によっていかに相乗効果を出せるかに知恵を絞ったという。伊藤プロデューサーも「地域で映画を撮るということで、その土地をしっかりprしなければいけないという思いもあったのですが、野田さんにご挨拶させていただいたとき『映画は自由であるべきものなので頑張って』と仰っていただいたのが、とても心強かったです」と述懐する。
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映画作りは人を育てる!
mlfはこれまでも、シーズンごとに地域に拠点を置き「企業版ふるさと納税」の制度を活用した地域振興・教育事業として市民参加の制作・上映、映像制作ワークショップなどを行っている。 伊藤プロデューサーは、地域で映画を作ることについて「映画製作って、アナログで一つのいい作品を作ろうという目標のために、男女、年齢関係なくいろいろな人が集まって、事業として推進できるお仕事なので、地域創生もそうですが、人と人が繋がるコンテンツとして非常に価値があると思っています」と力説。
さらに出来上がった作品に対して、映画館で上映することはもちろん、映画館のない地域には違う視聴方法を提示するという。伊藤プロデューサーは「season5‐6のプロジェクトでは、映画館が近くにない地域の方にも作品を届けるためにカラオケボックスでの上映を行いました。さらにnttドコモさんが運営するlemino(レミノ)での配信も新たに行っています」と取り組みを説明する。 さらに伊藤プロデューサーは「いま“官民一体”で実行委員会を作り、その方々を中心にプロジェクトチームを立ち上げてもらって映画制作コミュニティを作っていくことに取り組んでいます。そこに対して、市に事業予算化していただき、企業版ふるさと納税という制度を活用して、企業さまに地域に寄付をしていただく。その資金で映画を地域で作ることで、映画に携わる人口を増やす。映画作りを通じて、考えることやリテラシー、コミュニケーションを育んでもらう」と本プロジェクトの意義を述べる。 こうした取り組みに野田議員も「一人でも多くの人に作品を届けるのはとても大切だと思うし、私もコロナ禍において、さまざまな配信サービスで魅力的なコンテンツに出会ってしまい、毎晩深夜までいろいろなものを観ないと眠れない女になってしまいました」と笑う。 -
「企業版ふるさと納税」を活用したプロジェクトで閉塞的な映像業界に風穴を!
すると山田は「僕らが作った『ゾッキ』という作品には、はっきりとメーカーが分かる焼酎が置いてありましたよね」と笑う。伊藤プロデューサーも「その原因の1つは、日本の映像の現場では一部を除き製作費が年々下がってしまっているんです。それによって俳優さんたちが特に作品に出演するだけでは稼げなくなっている。そうすると、大きな収入である広告やcmに出ることになるので、広告契約を結んでいる俳優さんと映画内で一緒に商品は映せなくなります。予算を企業さまから捻出する機会が減っていくこととなります。制作費やプラスの予算が得にくい状況が生まれているのが現状で気になる点です。演技のことだけを考えられる制作環境にしていければ、もっと高いポテンシャルを発揮できると考えています」と説明する。 たくさんの作品を観ているという野田議員。そこで気づいたのが、日本の作品には劇中に出てくる食べ物や飲み物、コスメなどが、どのメーカーのものか分からないようになっているということ。「韓国ドラマなどは、すごく分かりやすくメーカーが出ていたりしますよね。日本はそういうことはないですよね」と疑問を呈する。
こうした問題点を解消する一つの手段が、先述した「企業版ふるさと納税」を活用したプロジェクトだという。伊藤プロデューサーは「作品が地域と共同の権利になり二者で話し合いながら権利運用ができます。mlfでは全収益において、地域、実行委員会に20%、監督、クリエイター、俳優さんに20%を分配することに成功しています。俳優さんや監督さんの時間に対する対価を、ちゃんと売り上げとしても分配すれば、よりみんなで作品に向かうことができると信じています」と実例を紹介する。
この話に野田議員は「私たちも違う角度からそのことは考えています」と述べると「なぜこれだけ日本と他国のコンテンツに差がついてしまったのか。日本では制作会社の立場が弱く、下請けになって、製作費が削られてしまう。要は中小企業的に言うとブラック下請けになっているんですよね。上だけが儲かる仕組みを変えていかなければいけないという話はしています」と力強く語る。 山田は「何よりも作品の質を上げることが重要なんです」と語り出すと「質を上げるためには労働環境はとても大切になってきます。一流のアスリートだって、睡眠不足だったら記録は出ない。映像の業界では、どうしてもスタッフ・キャストが睡眠不足になりがちなんです。そこはちゃんとルールを作って質を上げていくことが必要。『日本のコンテンツって面白いよね』と思ってもらうためには、予算を増やさないといけないし、僕らは表現者なので、面白く楽しく、多くの人に興味を持ってもらえる作品を作っていかなければいけない」と課題をあげていた。阿部も「コンテンツを作るシステムがうまく機能していないんですよね。才能のある人はいるのですが、関係人口はどんどん減っている。しっかりとした制作の環境を作ることが今の課題ですね」と追随していた。
こうした課題について野田議員は「日本は目に見えるもの、例えば橋とか道路とか建物には税金をスムーズに投入するのですが、文化に対する投資はあまり認めてこなかった。アニメの世界も役者さんも制作会社さんも、みんな“好き”だから頑張ろうって。でもそういう根性論はもう違うと思う」と解説していた。 -
日本人にしかできないことを、プライドを持って!
自民党で情報通信戦略調査会の会長を務める野田議員は「現在、私たちが情報通信政策で話をしているのは、もはや放送と通信というものを分ける時代ではなく、あくまでこれらはコンテンツを届ける手段であって、大事なことは、これから映画やドラマなどしっかりした日本のコンテンツを作っていかなくてはいけない。ささやかだけど当たり前の一歩を踏み出そうとしている最中なんです」と語ると、山田がポイントとしてあげたのが、日本人ならではの表現方法。山田は「海外の人に興味を持ってもらい、作品を買ってもらう。そのためには、まず自分たちが自信を持たないといけない。プライドというか、自分たちにしかできないというものをしっかり自覚して強みにしていくこと。オリジナルで日本人にしかできないことをやるべき」と提言。
阿部も「自分たちの生きている場所を見つめることで、自分たちのやり方が生まれてくる。それを外国の方に観てもらいたいという考え方。これまではどうしても国内消費だけで予算を考えたりしたので、そこを日本ならではの文化や風習、地域特性のなかから、より外の人が魅力に感じてもらえるような強みを探していくことが大事だと思います」と山田の意見に賛同する。
野田議員も「確かに日本ってすごいところがいっぱいあるんですよ。でも自信がない人がたくさんいる。こうした映画で、日本の良さをたくさん伝えることで、自信につながってくれたらいいですよね」と映画の力に期待していた。
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今後の展望は?
さまざまな課題や、いますべきことを話していくなか、今後について議論が進むと、伊藤プロデューサーは「いまflixやprime Videoなどが日本のなかで影響力が大きくなってきていますが、影響力のあるジャパンプラットフォームの創出が必須」と野望を述べる。
その実現について「どうしたらいいの?」と野田議員が問うと、山田は「いま組ませていただいているドコモさんのleminoというサービスを盛り上げることと共に、一番重要なのは面白いコンテンツがあるかどうか」と即答する。
伊藤プロデューサーは「我々は良いものを作るために、企業さまと地域の取り組みをどんどん繋げていって、輪を広げていきたいなと思っています」と未来に思いを馳せていた。 -
小栗旬、浅野忠信らがメガホンをとる「ミラーライアーフィルムズ」Season6は今秋公開予定。
Lemino(レミノ)で「ミラーライアーフィルムズ」チャンネル開設。オリジナル作品、新作、過去シリーズ全作品を順次無料配信!
(C)2024 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
取材・文:磯部正和、クランクイン!編集部/写真:高野広美
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