杏や呉美保監督らが参加した、女性を主人公にした7つの短編から成るアンソロジー映画『私たちの声』より、劇中ほぼノーメイクで“日本のお母さん”を演じた杏が、作品の魅力や役作りなどについて語るインタビューが到着した。

　女性のエンパワーメントが叫ばれる現代、世界の映画界で活躍する女性監督と女優が集結し、女性が主人公の7つの物語を紡ぎ出した本作。「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンとする非営利映画製作会社「We Do It Together」協力のもと、そのメンバーを中心に、企画意図に賛同した多くのキャスト＆スタッフたちが世界中から集結。実際の出来事から着想を得たエピソードからフィクション、さらにはアニメーションまで、世界各地を舞台に感動的で力強い物語が描かれる。

　出演者は各国を代表する実力派女優が勢ぞろい。『ドリーム・ガールズ』のジェニファー・ハドソン、『スーサイド・スクワッド』のカーラ・デルヴィーニュをはじめ、エヴァ・ロンゴリア、マーシャ・ゲイ・ハーデン、マルゲリータ・ブイ、ジャクリーン・フェルナンデスらが名を連ねる。

　監督には、『トワイライト〜初恋〜』のキャサリン・ハードウィック、女優タラジ・P・ヘンソンらが参加する。日本からは、『そこのみにて光輝く』が国内外で高い評価を受けた呉美保が、前作『きみはいい子』以来8年ぶりにメガホンをとり、女優・杏を主演に日本の情緒あふれる家族の姿を描く。

　さらに、本年度アカデミー賞歌曲賞にノミネートされた主題歌「Applause」は、これまでセリーヌ・ディオンやシェール、レディー・ガガなど著名アーティストに楽曲を提供したダイアン・ウォーレンが作詞・作曲を務め、歌手・女優としてマルチに活躍するソフィア・カーソンが歌唱を担当。今日という1日を生きる人々に、曲名どおり「拍手」を贈る力強い楽曲となっている。

　2023年、出演作の劇場版『TOKYOMER～走る緊急救命室～』や『キングダム 運命の炎』が大ヒット、先日には11月公開の『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』に主要キャストとして登場することが発表されるなど、活躍を続ける杏。

　そんな杏が世界的スターたちと肩を並べて出演し、世界デビューを果たした『私たちの声』。7つのショートストーリーで紡がれる本作の日本版エピソード「私の一週間」に出演する杏は、育児、家事、仕事に奮闘し忙しない日々を過ごす2児のシングルマザー・ユキ役を演じている。

　杏は、本作の出演を決めた理由を聞かれると「日本では、こと育児に関してや家事という部分では、女性が背負う部分がかなり大きいのではないのかなと思っています。呉美保監督が脚本を手掛けられた本作は、子を持つ母の多忙な日常を淡々と、過剰にドラマティックにせずに普通の物語として描いている点がとても素敵だなと感じ、参加したいと思いました」と、呉美保監督が描き出す物語に魅了されたと明かす。

　ドキュメンタリーのようにリアルな母と子の暮らしが描かれている「私の一週間」。杏はユキの役作りについて「お芝居ではありますが、子役のふたりとの自然体な関係性や言葉遣いが求められていたので、同じ年代の子を持つ私の体験も役に立っていたのかなと思っています」と自信をのぞかせる。

　撮影時はとにかく自然な日常を描くことに全力を注いだそうで、「ちょっとした動線においても、少しでも不自然な瞬間がないように、家族が住むアパートに何年も住んでいたような気持ちで演じることを心がけました。例えば何気なく自転車を漕ぐ動作も、もう何十回も何百回も通った道であるという気持ちを持ち続けて演じるというのは難しかったです」と苦労を語っている。

　呉美保監督とは今回が初タッグとなるが、相性は抜群だったそう。監督は「本作で彼女と出会えたことは、今後の映画作りにおける大切な財産」と絶賛しており、杏もまた「監督のお子さんとうちの子供の年齢が近かったり、映画で描いているテーマも“子供を育てるお母さん”だったので、『こういうのあるよね』『あるある！』という他愛もない母親同士の会話をしながらわいわい作っていけたことがとても楽しかったです」と撮影を振り返った。

　昨年アメリカで公開された際、文化の違いがあるにもかかわらず、7つの物語の中でも特に高評価を受けたという『私の一週間』。日本の母親の等身大の姿を、ほぼノーメイクで体現した杏の確かな演技力をじっくり味わえる一作となっている。

　映画『私たちの声』は公開中。