小出恵介、出口が見えず葛藤の日々 それでも捨てきれなかった俳優への思い
■復帰までの葛藤「それまでの自分が、どれだけ守られていたのか分かった」
本作の現場で「この道を歩んでいきたい」と確信したという小出だが、ここにたどり着くまでには「何度か、俳優を辞めようかと思ったこともあります」と語る。「でもどうしても、俳優への思いを捨てきれなかった。“辞める”というスイッチを押していたら、そこで終わっていたと思います」。
2017年に芸能活動を休止したのち、2018年に渡米。「“もう一度がんばろう”と決めて、ニューヨークで勉強を始めた」ものの、「前向きな行動に移ったはずなんですが、具体的なプロジェクトが決まるまでは、とても不安でした。やっぱり人って、出口が見えているからこそ、がんばれるもの。英語を学んだり、演技の学校に通っていても、明確な出口がないですから。ふと、“これはなんのためにやっているんだろう”という思いがよぎる。それは今までに経験したことのない、戦いでした。かなりしんどかったですね」と葛藤する日々。出演する予定だったブロードウェイでのミュージカル『えんとつ町のプペル』もコロナ禍で中止となり、「目の前に作品が見えてきたと思うと、消えてしまったり。そのたびに、心も折れそうになりました」と打ち明ける。
小出は「ギリギリで耐えて、気持ちをつなぎ止めてきた。“ここでやめたらもったいない”という意地もあったかもしれません」と吐露。ようやくドラマ復帰を果たしたが、芸能活動休止前とその後では、「自分自身、すごく変わったと思います」とも。一体、どのような変化があったのだろうか。
すると「以前はなぜだか、生き急いでいたと思うんです。余裕がなくて、自己中心的になっていった部分もあったと思います。芸能界という世界しか知らず、その世界や、そこにいる自分も客観的に見ることができなかった気がしています」と本音を口にした小出。
ニューヨークに行ったことで、大きな刺激を受けたと続ける。「ニューヨークは多様性の街でもありますし、“人間って、こんなにもいろいろな人がいるんだ”ということを、まざまざと見せつけられた。またそこではもちろん、誰も自分のことを知りません。それまでの自分が、どれほど周囲の人々に守られていたのか、どれほど助けられていたのかが分かった」と感謝の気持ちが込み上げたそうで、「すると、自分のことも客観的に見られるようになって。作品ができるまでのプロセスにも目を向けられるようになって、あらゆることに臨む姿勢や意識も変わってきた。ちょっと荒療治でしたが、ものすごくいい経験ができました」と目を細める。
本作では、仕事のストレスから酒に逃げてしまう人々の姿も描かれる。小出自身、「芸能界で生きていくことは、しんどいことでもある」と感じてもいるが、「喜びよりもストレスが強いと、つぶれてしまったり、トラブルを招いてしまう可能性もある。でもストレスよりも、“この仕事が好きなんだ”という喜びや、周囲への感謝がまさっていけば、続けていけるはず。僕は、迷惑をかけてしまった人もたくさんいるし、きちんと恩返しをしなければいけない。喜びや感謝を大切にしながら、歩んでいきたい」としみじみ。「ここでゼロからスタートして、役者業に身を捧げていきたい。今回の現場で、心の底からそう思いました」と真っすぐな瞳で、熱く決意表明していた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
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