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ふくだももこ監督×児玉美月が語る“日本の映画業界” これまでの当たり前は「実はとんでもなくストレス」

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■「女性監督」という言葉について

児玉:今回の『ずっと独身でいるつもり?』も、女性が主人公で、女性の問題がテーマで、監督ご自身も女性なので、「女性監督ならではの感性」だったり「女性監督だから撮れた」などを「褒め言葉」として投げかけられることもありそうですが、ふくだ監督はそういった言葉をどのように感じていますか? 私はかねてそういった言葉には疑問を感じています。

ふくだ:私は女性の映画監督であり、今回のように女性を描く映画も撮ってきましたが、「女性監督」という言葉はなくなればいいと思っています。例に挙げていただいた言葉は、まったく褒めていないと思いますし、はっきりとそう伝えたこともあります。たとえば今後もし、自分の映画のパンフレットなどで「女性監督うんぬん」のようなコメントがきたとしたら、消してくださいと伝えますね。不均衡をボコボコにしていくというファイトスタイルでやっていくので(笑)。

児玉:ふくだ監督は映画作品そのものにおいても、すでに規範性などを切り崩していっていると思いますが、同時に映画の外の古い慣習までをもパワフルに壊していってほしいと期待しています。今回の対談の企画を持ちかけていただいたのはふくだ監督の方からでしたが、手厳しく新作映画を批判した映画評論家と宣伝のさなかに対談しようとすること自体、普段からあらゆることにおいて闘っていらっしゃるふくだ監督だからできた有意義な試みだったと思います。映画評論家がしがらみや関係性によって、批判には口をつぐみ、称賛しかしないような映画業界には、はっきりとNOと言っていきたいです。ふくだ監督とは、映画業界内のそれぞれの持ち場で闘う同志のような間柄でありたい。なので今後も、ふくだ監督であっても、ダメな映画はダメだとはっきり批評します。

ふくだ:今回は批判からはじまった本当に珍しい対談だったし、めっちゃ戦闘モードでくる方もいますけど、児玉さんが鋭くも優しさのある切り込み方をしてくださったおかげで、いろんなことを話せました。イチ映画ファンとしては、批評家と監督が批判も含め、フランクに対話ができれば面白いと思っています。(文:児玉美月)

 映画『ずっと独身でいるつもり?』は全国公開中。

■ふくだももこ

ふくだももこ監督
1991年生まれ、大阪府出身。2015年、若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)に選出され、短編映画『父の結婚』を監督、脚本。2016年、小説『えん』がすばる文学賞を受賞し小説家デビュー。2017年、小説『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』を発表。 2019年、山戸結希企画・プロデュースのオムニバス映画『21世紀の女の子』で『セフレとセックスレス』を監督。また、『父の結婚』を自らリメイクした『おいしい家族』で長編監督デビュー。監督作として『君が世界のはじまり』(2020)、ドラマ『深夜のダメ恋図鑑』(ABCテレビ・テレビ朝日系/2018)、『カカフカカ−こじらせ大人のシェアハウス−』(MBS/2019)、演劇『夜だけがともだち』など映画、テレビ、舞台演出と幅広く活動中。また本作が自身の出産後初の監督作品でもある。

■児玉美月(映画執筆業)

映画執筆家・児玉美月氏
「リアルサウンド」、『キネマ旬報』(キネマ旬報社)、『映画芸術』(編集プロダクション映芸)、『ユリイカ』(青土社)、劇場用パンフレットほか多数。直近では、『アニエス・ヴァルダ 愛と記憶のシネアスト(ドキュメンタリー叢書)』(neoneo編集室)、『ジョージ・A・ロメロの世界──映画史を変えたゾンビという発明』(Pヴァイン)へ寄稿。共著に『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書)がある。

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