岩井俊二監督、「ラストレター」を日本・中国両方で映画化した理由
■コロナ禍に思う、映画界の将来
映画監督という枠にとどまらず、さまざまな表現方法を模索しているからこそ、岩井監督の作品は立体的であり、世界中の人の心を揺さぶるのかもしれない。そんな岩井監督は、いま世界中を震かんさせているコロナ禍をどう見ているのだろうか。
「日本だけではなく世界中が、なかなか活動を再開できない。この病気自体、いま入口に立ったばかりかもしれないと考えると、映画界も今後どのようになっていくのか、見当もつかないですよね」と率直な意見を述べる。
一方で「僕は幼少期、ベトナム戦争や公害問題、オイルショックなどがあって、子ども心に憂鬱(ゆううつ)だった。そんな中、少しでも明るくなればと、音楽や漫画、アニメ、文学で明るいものが出て80年代を作っていった。それを軽薄短小と揶揄(やゆ)する人もいましたが、僕は世の中に対して、一定の意味があったと思っているんです。僕自体もその時の原体験が、いま自分のやるべきことの根底に根ざしていると感じています。その意味で、この時期はコロナと自分の創作が対峙(たいじ)している状態。将来はどうなるか分かりませんが…」と自身の現在地を述べてくれた。(取材・文:磯部正和)
岩井俊二監督 (C)Munehiro Saito
映画『チィファの手紙』は全国公開中。