綾野剛「出し惜しみをしない」“俳優”として園子温監督へ挑んだアプローチ
龍彦らがもがく歌舞伎町の裏社会も、その職業も、正直、私たちとは距離がある。しかし綾野は本作を次のように分析する。「歌舞伎町のスカウトマンの世界や環境に、私たちはいません。でもそれがどういったものなのかということを説明する映画ではないんです。龍彦たちの姿には、僕たちが普段生活しているなかで体感することや、愛だとか幸せだとか、子どもの靴を見て可愛いと思う感情だとか、そうした普遍的なものがゴロゴロ転がっているんです。むしろそこをちゃんと受け止めて欲しいし、何が正義でどう立ち続けるべきなのかを分かりやすく表現している作品だと思います」。
そして龍彦への想いを語った。「龍彦は未熟です。女性に手を出すのは許せないと本気で思っているし、女の子を幸せにしたいと心の底から思ってる。でも、自分がなにで収益を得ているのか、きちんと理解していない。彼の考え方はきれいごと。ただ、そういったきれいごとを何の迷いもなくブレもなく、混じりけのない純粋さで口にする人間を、人は希望だと感じるし、やっぱりそうした人間は必要。龍彦が照らすことによって闇が露わになる。それほど彼は輝いているし、人に愛されている。とても愛おしい存在です。僕自身にとっても」。(取材・文・写真:望月ふみ)
『新宿スワン』は5月30日よりTOHOシネマズ新宿ほかにて全国ロードショー。