振り返るとトラウマシーンの連続! 青春映画の金字塔『スタンド・バイ・ミー』
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●親友クリスの死
だからこそ、映画の終盤に訪れるゴーディとクリスの別れはこのうえなく悲しい。4人の少年たちにとって「心」でもあったクリスは、成長し苦労の末に弁護士になるも、通りがかりにケンカを仲裁しようとして命を落とす。
「クリスがつい、リヴァーに重なるんだ。彼を思うと悲哀で胸がつまる。この場面を見るのは本当につらい」。後にロブ・ライナー監督は語っている。「リヴァーはまだ少年だが、驚くほど成熟していた。人としての深みと賢さを備えていた。若くして何かを悟っていたから、同時に混乱した子どもだったんだろう」。
子どもから大人へ。人生の現実に直面する苦みと、過ぎて戻らない童心へのノスタルジーが入り混じる結末に、時代を超えたベン・E・キングの不朽の名曲「スタンド・バイ・ミー」が流れて映画は幕を下ろす。
●原作の結末はもっとホラー
スティーヴン・キングの原作では、ゴーディは不良たちの報復を受け、さらにゴーディ以外の3人は全員、不慮の死を遂げるほの暗い「ホラー」な結末が用意されていた。映画はキング独特のエグみを、誰もが共感できる子ども時代の古傷に置き換え、情感あふれる娯楽作に作り変えている。原作の『THE BODY(死体)』に自分の過去を投影し、『スタンド・バイ・ミー』と題した成長物語に読みかえたロブ・ライナー監督の功績は大きい。映画監督である父の後を追って芸能界入りした彼にとって、本作は初めて自分の仕事が認められ、その後の方向性を定めた重要な1本でもあるのだという。
人生において二度とない「大きな変化」を迎える短い夏。どこまでも続く線路を歩く少年たちの姿に永遠の一瞬が輝く。あの頃の自分とまた出会える青春映画の名作。今夜の放送をぜひ、お楽しみに!(文・山崎圭司)