『バケモノの子』が大ヒット、細田守作品はなぜ老若男女に愛されるのか?
いま最も注目されているアニメーション監督の一人が、細田守監督だろう。7月13日に公開された最新作『バケモノの子』は、土日2日間で動員49万4000人、興収6億6700万円(※興行通信社調べ)をあげ、週末観客動員数ランキングで『ターミネーター:新起動/ジェニシス』や『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』ら強力洋画勢を抑え、堂々の首位スタートを切った。『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』などの話題作を生み出した細田作品の魅力に迫る。
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まず注目したいのが、大がかりなプロモーション展開だ。最新作『バケモノの子』公開をはさみ、過去の細田監督作品が日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で3週連続放送される。もちろん、日本テレビ放送網が製作委員会に名を連ねているからと言ってしまえばそれまでだが、まるでスタジオ・ジブリの新作が公開されるような大々的な取り上げ方だ。
テレビ放送のゴールデンタイムでこうした企画があがるということは、細田監督がアニメファンばかりではなく、幅広い層からヒットメーカーとして認知されるようになったからに他ならない。「タイムリープ」や「仮想空間」、「おおかみ男」など、非日常的な設定は、一見すると、とっつきにくさがあるにも関わらず、老若男女問わず多くの人から高い支持を受けて愛されている。
その理由をひも解いてみると、あるキーワードが浮かびあがってくる。細田作品に共通しているテーマである“家族の絆”や“人間関係”だ。こうしたテーマを結構な直球で描いているにも関わらず、前述したような特殊な設定を介することにより、青臭くなく、恥ずかしさもなく、ストンと人々の心に入ってくる。「泣かせよう」「心を振るわせよう」というあざとさが感じられないぶん、より強く、長く人の心に残るのだ。
エッジの効いたコアなアニメファンの間では「やや物足りない」という意見も聞かれるが、こういう意見が出ることこそ、細田作品が、バランス感覚に優れた、万人に受ける作品であるという裏付けになっていると言えるだろう。初日舞台挨拶でも細田監督は自身で「子供の成長がシンプルに描かれている映画」と語っているように、こねくり回すことなく“シンプル”に伝えることの“強さ”をしっかりと理解している。
また、細田作品のもう一つの特徴が、メインの役どころに俳優を起用することだろう。本作でも役所広司、宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず、大泉洋などそうそうたるメンバーが顔を揃えている。近年、ネットを中心にプロの声優ではなく、俳優を起用することに対して物議を醸すことが多いが、本作でも人によっては、俳優の顔が思い浮かんでしまうキャラクターもいる。
しかし、キャラクターに違和感を感じないのは、細田監督の「声のイメージや人間性に合わせたキャスティング」へのこだわりだろう。実際、演技力のある俳優たちが命を吹き込んだキャラクターは、スクリーン上で躍動する。十分感情移入できるのだ。
配給の東宝では、最終的に70億円を視野に入れているようで、細田作品の勢いは止まるところを知らない。この夏、最大の注目作品になることは間違いないだろう。
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