竹中直人、『MIRRORLIAR FILMS』で感じた山田孝之のすごさ 『たてこもり』撮影は「現場の勢いも大切に」
P R: MIRRORLIAR FILMS PROJECT
クリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)』。Season1~4では、俳優や映画監督、漫画家、ミュージシャンなど総勢36名のクリエイターたちが、個性的な短編映画を発表した。そんなプロジェクトも新たなステージを迎え、Season 5~8は新たに一般公募作品も加わるなど、さらにバラエティに富んだ短編映画が集まった。今回クランクイン!では、シーズン5を彩る6作品の監督、キャストたちにリレー形式でインタビューを実施。第3回目は『たてこもり』を監督した俳優であり映画監督の竹中直人さんに制作秘話を、『変哲の竜』で監督を務めた漫画家の大橋裕之さんに、本作の感想を伺った。
■追い詰められた人間を狂気的かつコミカルに描く
とある田舎町にある喫茶店「喫茶マーず」。そこで働く三兄妹の賢一(橋本稜)、英二(俵山峻)、三津子(佐々木史帆)のもとに1人の男(土佐和成)がやってくる。男は、妻が若い男と心中し、自らも死のうとしたが死にきれずにいる。ここに来る前に警察官を殺したと話す男に「そうだ、幸せな人から殺そう」と犯人に銃を突きつけられた三兄妹は、それぞれの人生で起こった不幸話を競い合う。
■見せ場となる「不幸話」のシーンは、即興の一発撮り!
――竹中さんは監督として数々の作品を手掛けてきていますが、今回『ミラーライアーフィルムズ』のお話があったときの経緯を聞かせてください。
竹中監督:山田孝之くんが『ミラーライアーフィルムズ』という作品を作り続けているというのは知っていました。それでシーズン1を観たんです。それがすごく面白かった。そこからシーズン2、3と続いていきます。だから僕にも声を掛かけてくれるかな…とずっと思っていましたが一切ありませんでした。「ふんっ!なんだよ!もう知るもんか!」と打ちひしがれていると、突然!「やりませんか!」の声!とてもうれしかったです。
――オファーがあったときはプロデューサー陣からはどんな要望が?
竹中監督:「竹中さんが撮りたいものを撮ってください。ただぴったり15分の物語でお願いします。」それだけでした。
――「たてこもり」という作品を撮ろうと思ったきっかけは?
竹中監督:今回脚本を描いてくれた和田清人さんと2人で1年かけて脚本を練っていた映画があったんです。でも途中でなくなってしまって…。それで今回再び2人でいろいろ話し合って物語を練っていったんです。夏の撮影になるという事でしたので、汗ばむような狭い空間の中、外には出れずずっと室内にいる物語にしようとストーリーが出来上がっていきました。
――三兄妹の会話がとてもシュールであり、残酷であり……とテンポのよい会話劇になっています。キャストも絶妙でした。
竹中監督:ストーリーを作る段階から、脚本の和田さん、スクールゾーンの2人、佐々木さんと5人で集まって世間話しをしながら物語の全体像を決めて行きました。舞台を喫茶店にする事は早くから決まっていました。
――15分という長さはいかがでしたか?
竹中監督:楽しい15分でした。あまり決め込まず即興的演出をしました。基本的に長回しです。不幸な出来事を話すシーンはスクールゾーンのアドリブにお任せしました。
――あの不幸話は脚本に書かれていたものではないのですね?
竹中監督:そうです。脚本にも不幸話は書かれていましたが、現場の勢いを大切にしたかったのでテストなしの一発本番です。
――劇中に流れる口笛も竹中さんの即興で作ったものが使われていると。
竹中監督:はい。自分のイメージした曲を携帯に録音しておいて、音入れの時に自分で口笛を吹いて録音しました。
――お話を聞いていると、非常にライブ感を大切にされた撮影だなと感じました。
竹中監督:いつも現場の即興性を大事に撮影しています。ラストはどうしてもAFRAに参加して欲しくて。松浦りょうさんも『赦し』という映画を観て彼女の表情と声があまりに素敵だったので、AFRAとセッションしてもらいたいと思ったんです。松浦さんとAFRAの2人の姿を見たとき「♪すごいスピードで♪」と音が浮かんだんです。そのまま歌ってもらいました。
――長編なども撮られていますが、あまり決め込まないのはどの映画でも一緒ですか?
竹中監督:ですね。最初に『無能の人』という映画を撮ったとき、どうとでも編集できるように色々なアングルで俳優のお芝居を何度も撮っていたんです。するとずっと助監督から「そんな撮り方してたら終わらねーよ」と怒られて(笑)。それ以降はしっかりカット割りを決めて撮るようになりました。僕はこれまで撮影日数をオーバーしたことはないです(笑)。
――大橋監督は、『ゾッキ』でご自分の描かれた漫画を竹中監督が実写化されましたが、『たてこもり』をご覧になっていかがでしたか?
大橋監督:めちゃくちゃ面白かったです。話もそうですが、会話も、作られたという曲も、竹中さんのエッセンスがふんだんに入っているというか…。ずっと頭に残るような作品でした。タバスコをスパゲッティにかけまくるところとかも声を出して笑ってしまいました。
――改めて『ミラーライアーフィルムズ』に参加して、この企画に対してどんな思いが湧きましたか?
竹中監督:山田孝之くんはすごいなと思いました。そのあとから似たような企画も出てきましたが、やっぱりこっちが本家です。どの作品も作家の個性が出ていて、退屈しない。ずっと興奮したままで、「あれ?もう終わり?!」って感じでした。でも6本もあるからどうしても比べられちゃうんですよね(笑)。そこも含めてとっても面白い企画だなと思います。またぜひ参加したいです!
『MIRRORLIAR FILMS Season5』は、5月31日(金)より2週間限定公開。
(C)2024 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
取材・文:磯部正和、クランクイン!編集部
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