『SHOGUN 将軍』鞠子役抜擢のアンナ・サワイ、ハリウッド女優へと羽ばたいたその道のり
本作の主役とプロデューサーを務める真田は、アメリカを拠点に活躍する日本人俳優の第一人者。同じく世界を視野に入れて活動するアンナにとって、今回、彼の体験やメンタリティーを学ぶ絶好のチャンスだった。「プロデューサーとしてのヒロさん(現場で真田は親しみを込めてヒロ、またはヒロさんと呼ばれている)は、つねに優しくて情熱的なんですよね。ジョークを言って現場を和ませることも忘れないし、みんなの一番良いところを引き出そうと、ご自分の出番が終わっても、ずっとモニターを観ながら一人一人にアドバイスされている。レジェンドなのにとても人柄が柔らかなんです」と称賛の言葉を惜しまない。
アクションの練習にも顔を出し、「自分のパート以上に私のパートを真剣に考えてくださる」という真田を、アンナは彼が演じる虎永の人柄になぞらえる。「温かく柔らかいけれど、仕事に関しては妥協しない。答えが見つかるまでとことん指導してくれる。そんな1本筋の通ったところは、虎永様を彷彿させるんですよね。私が長刀(なぎなた)を振り回すシーンも、自らやって見せてくださったんですが、女性しか持たない武器なのにあっという間に習得されて、膝を付けたままで戦う姿が完璧なんです。ただ、命がかかった場面では脚を広げたスタンスで戦った方がリアルだからと柔軟性を持たせてくれるところもあって、指導者としても素晴らしいとしか言いようがありません」と目を輝かせる。
ディズニープラス『SHOGUN 将軍』場面写真 (C)2024 Disney and its related entities Courtesy of FX Networks
俳優としても、「私が語る資格などないレベル。決して大仰(おうぎょう)な演技ではなく、内面から滲み出てくるような重みと言いますか…特に虎永の衣装を着ているときはものすごいオーラを感じます」とこちらも大絶賛。「私の場合、『アジア人をもっと起用しよう』という機運のなかでキャリアをスタートさせたので、役を掴むことに昔ほど苦労はしていないと思いますが、ヒロさんの場合は、役がない、セリフがない、発言権もないなど、不遇の時代を耐えながら、一つ一つキャリアを積み重ね、現在の地位を獲得されたパイオニア。つまり、海外進出を目指す私たちのレールを敷いてくれた方なんですよね。その苦しみを背負ってのし上がってきたからこそ滲み出る迫力は、決して真似できるものではありません」。唯一無二の存在に、アンナも言葉では言い尽くせないほどの“学び”があったようだ。
これまでは、「絶対にこの役をやってみたい!」というスタンスではなく、どちらかと言えばマネージャー主導でオーディションを受け、運命的な出会いに一喜一憂してきたというアンナ。そんな彼女が、『SHOGUN 将軍』という作品で日本人としての“誇り”を初めて体感し、「ヒロさんのように全身全霊を作品に捧げる情熱的なプロデューサーやショーランナーとまた一緒に仕事がしたい」という“欲”が生まれてきたという。まずは新境地に挑んだ戸田鞠子役、アンナが心血を注いだヒロインをこの目に焼き付けようではないか。(取材・文:坂田正樹 写真:高野広美)
『SHOGUN 将軍』は2月27日からディズニープラスの「スター」にて独占配信開始(初回は2話配信、その後毎週1話ずつ配信。最終話は4月23日)。