賀来賢人が挑んだ新境地 主演・原案・共同プロデューサーとして創り上げた“忍び”の世界を語る
――賀来さん自身が経験豊富な分、脚本時点で「これは出来ないかも」とセーブをかけてしまう瞬間はあったのか、それとも意識的にリミッターを外して臨んだのか、どちらでしょう。
Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』場面写真
賀来:それでいうと、脚本作りの時はワクワクしていましたが、ふと我に返って「これ出来るのか?」とは思いました。もうそれは全部が全部です(笑)。忍者×現代という設定と、事件も壮大になっていきますし、そもそも俵家が暮らす家をどうする?という問題がありました。やっぱりロケハンをしていても(理想の家が)見つからず、美術部がセットで作り上げてくれて。美術、撮影、照明、衣装、メイクと全ての部署に日本一の方々が集まってくれたので、助けられっぱなしでした。日本のクリエイターたちは本当にすごい才能を持っていると感じましたし、みなさんのおかげで自分たちのビジョンが実現できたと思っています。
Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』場面写真
そして現場では、山田孝之さんや江口洋介さん、宮本信子さんをはじめ、みなさんがどんどん「自分はこう思う」というアイデアを出してくれました。本番直前にセリフを変えることもありましたし、それをやられると嫌な方もいるかと思うのですが「むしろやらないの?」という空気を作ってくれて。
――そうした空気感は、撮影当初から出来上がっていたのでしょうか。
賀来:そうですね。僕とデイヴが現場でアイデアを出し合っているのをみなさんが見ていたこともあるでしょうし、そもそも素晴らしい役者さんだからそれが「出来る」ということもあったかと思います。みなさん本当に高い柔軟性をお持ちでした。
――ものづくりにおいて「これをやりたい」も大切ですが、「これはやらない/やりたくない」も同じくらい重要ではないかと。賀来さんが今回「これはやらない」と定めたものはありますか?
賀来:まず一つは、忍者らしさ。現代に忍者がいるとなるとやっぱりスパイものになってしまうんです。ガジェットも新しくしたいとなると忍者らしさがどんどん消えていってしまうので、「忍者のあるべき姿とは何だろう」と常に模索していました。撮影中も「忍者とスパイは違う」を念頭に置いていましたね。ただ、デイヴが誰よりも忍者に詳しかったのですごく助けられました。
そして、なるべく説明ゼリフをなくすこと。僕がずっと思っていたのは、日本の作品の説明ゼリフの多さです。映像があるのにセリフで説明するほどもったいないことはないと思うので、どこまで削れるか挑戦しました。削れば削るほど大変だということも分かったし、セリフがないからこそ空気感で伝わるものはやっぱりあるなということも、改めて感じることができました。
あとはもう、デイヴのやりたいトーンを守ることだけですね。予算やスケジュールといった外的要因はたくさんありますが、その中でもデイヴに寄り添って、彼のクリエイティブを尊重することを特に意識しました。