『VIVANT』監督が挑戦した日本ドラマ異例の試み「1話を捨てる」「社員で作る」
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『VIVANT』メイキング写真 (C)TBS
本作は、SNSでさまざまな考察が展開され、それも社会現象化の一助となった。福澤監督は、そんなネットの反応をチェックしていたのだろうか。「最初は見てました。第1話でザイールが2発撃たれてるとか、超スローで見て投稿している人がいて、“バレた、まずい!参ったな…”と思いましたよ(笑)。ぴったり当たってるのもあったし、“黄色は裏切り者だ”といった、まったく意識してないものもあって、途中からあまりにも多すぎて見るのは止めました」。
演出の宮崎氏は公式SNSを担当しつつ、自身の個人アカウントでも、積極的にドラマの背景を発信していた。「(考察が)変にそこだけヒートアップしちゃってもあれかなというところは早めに解消しようと、公式で言うか、自分のアカウントで言うか、選別しながらやらせてもらいました。ノコルが日焼けしていないことも、9話くらいまで見てもらえれば、会社の社長で普段はオフィスにいるからだとわかるんですけど。ほかにも、5話で黒須(松坂桃李)と乃木が野崎(阿部)の車を追いかけているときに、絶対に気づくはずだという声もありましたが、モンゴルでは、あの道も国道なんですが、実際には砂煙があがって前後はよく見えないんです。そうしたことをきちんと解説するようにしました」。
福澤監督自身は「考察ドラマと言われるとは思ってなかった」そう。「犯人は誰だ?と散々考察を裏切り続けて、最後これだったっていうドラマは2~3回と見たくなくなる。そういうのは作りたくなかったですし、裏切りたくなかったから、乃木は実は別班だとちゃんと見せるために、ある程度のことは1話で見せていました」と振り返る。もし続編を作ることになっても「考察班にばれずに作ることを一切考えずにやるつもりです」ときっぱり。
『VIVANT』福澤克雄監督 (C)TBS
一部では、本作はまもなく60歳を迎える福澤監督の集大成の作品だとする報道もあった。「もうすぐ定年で、いいきっかけでドンとやっちゃうかなというのはあったんですよ。1年間くらい考えたドラマを出していくっていう、そんなシステムに他局も含めてなっていけばと。ちゃんと作ればどうにかなる、いいものを作れば売り上げも大きくなっていくという道を見せられたらいいなと思って作ったので、僕はこれからも作りますよ」とドラマファンとしてはうれしい答えが返ってきた。
福澤監督は隣に座る宮崎氏を見ながら「将来TBSを背負って立つだろうと思われる宮崎陽平、加藤亜季子という2人を強引に演出に入れました。激しいドラマをやればやるほど、自信がつくんです。これくらいのことを経験すれば、彼らは羊3000頭くらいいけるわとか、トラックやパトカーをぶっ潰すのは6台くらい用意しとけばいいかといったやり方やノウハウを現場で学んでいく。そういうために無理やり社員を入れたんです。ADもほぼTBS社員で構成しました」と明かす。宮崎氏も「勉強になりました。この時ジャイさん(注:福澤監督の愛称)はこうしてたなっていうものが僕の中に蓄積されましたし、自信になる前例を目の前で見せていただき、情熱を持って1つの作品に頭から最後まで携わらせていただいて、本当にありがたい機会でした」と感謝する。
「経験値ですよ。宮崎は『陸王』とかをやってるから、1万人くらいはさばけると思うんですよね。経験してるとどんどんどんどん大きなスケールで作れます。びびらなくなる」と語る福澤監督は、「とにかくやらせる。そして最後は、“ドラマは体力だ”ってことをわかってもらう」と笑っていた。(取材・文:編集部)
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『VIVANT別版 ~副音声で福澤監督が語るVIVANTの世界~』キービジュアル (C)TBS