稲垣吾郎&新垣結衣が明かす、パブリックイメージとの向き合い方
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――本作を観ていると、表に見えている一面だけではなく、人間は多面性のあるものだということも実感します。俳優さんは、世間からイメージなどで捉えられることもあるお仕事だと感じますが、外から見られている自分と、本当の自分とのギャップや、そういった意味での葛藤やもどかしさを抱えた時期はありますか?
稲垣:僕自身も「ガッキーは太陽のよう」と言ってしまったり、どうしてもパブリックイメージというのは持たれてしまうものですよね。でも僕はそれは仕方のないことだと思うし、ありがたいものだなと感じています。パブリックイメージがあるからこそ、また違った部分を見せられた時に自分も面白いじゃない?(笑)
――「外から見られている自分とは、本当は違うのに」と悩んだことはありますか。
稲垣:全然ないかな(笑)。僕はグループ活動をしていたので、グループの中でのキャラもあるし、「バラエティ番組ではこうしなければいけない」、「歌って踊る時はこうだ」とかいろいろな役割があったと思うんだけれど、そのすべてが嘘ではないので。世の中の方々が思う自分とギャップを感じることもあるけれど、それは違って当然。「本当の自分は誰も気づいていない」と思ったりすると、すごく面白いですよね。「自分のことをわかってほしい」なんて思っていないかもしれない。爆弾発言かな(笑)。
――たしかに稲垣さんが悪役として『十三人の刺客』に出演された際は、衝撃がありました。
稲垣:そうですよね。作品を観てくださる方は「新境地だね」と言っていただくことが多かったですし、本作の新垣さんについては僕も「こんな表情は見たことがない」と言ってしまう。それはもともとのイメージがあるからこそ、叶うことですよね。
映画『正欲』場面写真 (C)2021 朝井リョウ/新潮社 (C)2023「正欲」製作委員会
――新垣さんは、パブリックイメージとのギャップに悩むことはありましたか。
新垣:昔はありました。それこそ「太陽のような笑顔」というようなものを常に求められていた時期に、そこに振り切るのに体力を使ったりすることもありましたし、それを期待してきてくださった方が、私と対面した時にがっかりしたんじゃないだろうかと想像したりすると、悲しいなと傷つくこともあったように思います。でも今は、皆さんが私に対して持っているイメージもすべて違うはずだし、それはどれも私の一部だなと感じるようになって。受け取った方の中で、印象に残っているものはそれぞれ違う。でもそれが私のすべてかというとそうではなく、ごく一部。「私らしさ」というのは一つではないので、私自身もどのようなものか答えられないなと感じています。
稲垣:人って、物事をカテゴライズしたがるものだし、そこに収めると安心感があったりする。この映画はその点について今一度、考えられる作品ですよね。
――先ほど稲垣さんが、世間とのギャップについて「面白い」とお話ししていたことはどのように感じましたか。
新垣:ものすごくポジティブで、素晴らしいなと思いました。若い頃にそういった考え方ができていたらよかったなと。
稲垣:新垣さんはすごく優しいんだと思う。アイドルグループにいた僕こそ、本当は笑顔でいなきゃいけないんだから。それを端っこで眉間に皺を寄せているようなキャラでやってきてしまったんだから、ずるいんですよ(笑)。新垣さんは13歳、僕も14歳からこのお仕事をしています。そんな二人が「あなたの中にはまた違ったものがある」と思っていただけて、新しい役を求めてもらえた。そしてこうやってお話ができていることは、ものすごくうれしいことだなと思います。
(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
映画『正欲』は、11月10日公開。