小泉今日子「みんなを本気で楽しませたい」 デビュー40年を超えても走り続ける原動力
――(取材当時)すでにお稽古も終盤かと思いますが、お稽古場の様子はいかがですか。今回は、脚本・演出のペヤンヌマキさんを筆頭に、スタッフの方たちにも女性が多いと聞いています。
小泉:そうですね。なぜか私、そうしたシスターフッドとも呼ばれる、女性の関係を描いた作品に出ることが多いんですよ。昨年の『阿修羅のごとく』もそうでしたし、(2009年上演の)『楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~』もそうでした。女性ばかりというと、バチバチしている空気を期待されるのかもしれませんが、今回もとても平和に進んでいます。(演出の)ペヤンヌマキさんはみんなの意見を聞きながら固めていってくださる方なので、みんなでアイディアを出し合って進んでいるという感じです。音楽監督の向島ゆり子さんも稽古にほぼ毎日のようにいらしてくれて、とても明るい方。とてもいい空気に包まれている稽古場だと思います。
――今、お話に出たように、小泉さんはいわゆるシスターフッド作品にご出演されることが多いように感じています。そうした作品に対してはどんな思い入れがありますか?
小泉:年齢的に、もう「愛だ、恋だ」みたいな作品はあまり来なくなっているというのもあると思いますが。フェミニズムやシスターフッド的なものが散りばめられた物語というものは昔からたくさんあって、先達が少しずつ少しずつ進んできたものだと思います。そして、ある年齢になって、そのバトンを受け取ったら、また次に繋ぎたくなるんだと今、感じています。
それは、私もそうですし、きっと他のプロデューサーの方たちもそうなのかなという気がします。なので、そうした作品に参加できるのは、バトンを持って一緒に走ってる感じがしてうれしいです。もちろん、そうした作品だけでなく、男性を描いた作品も好きですし、全く違う作品に出演するときもその時々の関わり方で楽しんでいますけどね。
asatte produce『ピエタ』個性派ぞろいのキャスト陣
――バトンを繋いでいくというのはすてきな考えですね。小泉さんが強く影響を受けた方や、憧れの存在はいらっしゃいますか。
小泉:たくさん、たくさんいます。俳優だったら高峰秀子さんとか沢村貞子さんは、エッセイなどを読ませていただいて、すごくすてきな方だなと思っています。それから、子どもの頃から大好きで、いつかあんな大人になれたらと思っていたのは、ジャンヌ・モローやジーナ・ローランズ。憧れている人は、文筆家にも男性にもいますが、あえて女優に絞るとしたら、彼女たちです。
――先ほど、お話の中で「自分も幼い頃から大切にしているものにずっと支えられてきた気がしている」とおっしゃっていましたが、小泉さんが幼い頃に大切にされていたものって、どんなものなのですか。
小泉:自分の家の庭に咲いていたお花や植物といった幼い時の記憶が、ずっと私を救っています。若い時は、仕事に対して、自分の意志ではないところで自分のことが決定していくという怖さをすごく感じていたんです。その中で、自分がどうしたいのか、どんな人間でありたいのかを考えた時、ベースにあるのはやっぱり子どもの頃に家族と過ごしていた時の自分でした。その自分とかけ離れたキャラクターには絶対になれないものだと思います。どこかに自分が行ってしまいそうなときに思い出すのはその頃の記憶ですし、その頃の自分を基準に判断しているところはありますね。