山崎怜奈が「言葉」を大切にする理由 浴びせられた言葉に「傷付いた」過去も
――エッセイでは、過去の経験はすべて「私らしくいるために自分を高める学びの場」だったと振り返っています。その過程の一つ、アイドル時代の「学び」は?
山崎:人との会話の仕方です。こうしたインタビューの機会も学びの場で、テーマに沿ったお話を聞いていただくときに「どう聞かれたらうれしいか」「どうすれば自然に話を運べるか」を、プロのインタビュアーの方々からたくさん学びました。ラジオ番組『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』(Tokyo FM/毎週月曜〜木曜13時、通称ダレハナ)で、ゲストの方をお迎えしたときに「こう聞けば気持ちよくしゃべっていただけるかな」と、とっさに判断する訓練にもなりました。
――経験が今につながっているんですね。
山崎:だからこそ、神経質になってしまうときもあります。反対に、相手の言葉に思いやりがないと感じると、距離を置いてしまうときもあって。でも、それは自分が気にするからこその反面教師ですし、他人に対して「ありがとう」「ごめんなさい」をすぐ出すとか、言葉の添え方を気をつけようと思っています。元々、自分がしゃべる言葉にコンプレックスがあったので。
――コンプレックスとは?
山崎:エッセイでも、小学校時代に「気が強い」と揶揄(やゆ)されて落ち込んだ思い出を書いたんですけど、子どもの頃からニコニコと愛想よくするのではなく、頭で考えてパッと言葉に出してしまう自分にコンプレックスがありました。そんな自分が嫌で「直そう」と思って生きてきて、勉強になったのがラジオでした。『ダレハナ』は昼帯のFM番組なので雰囲気作りが大事ですし、やわらかく言葉を出す訓練になりました。
――生き方の「学び」にもなったラジオでは、聞き上手な印象も。質問時の工夫は?
山崎:ゲストでお迎えする方のファンの皆さんに、喜んでいただける話を聞くことができるかどうかを心掛けています。例えば、アーティストの方であれば作品制作の裏側やこだわりとか。事前に、直近のインタビュー記事を探して読んでみたり、俳優さんであれば映画も見ます。ゲストの方を知らない方がラジオを聴いているのも想定して、魅力が伝わり、好きになってもらえる人が1人でもいたらいいとも思っています。
――一方、コメンテーターの役割を求められる情報番組では「いつも直前まで悩む」と、エッセイで明かしていました。
山崎:政治や経済、宗教といったセンシティブな話題を扱うことも少なくないので「自分の言葉一つで誰かが傷付くかもしれない」と考えています。誰かにへつらって話すのではなく、正直で率直な気持ちを言うけど、何かと対比して一方を落とすような発言をしないようにとか。少しずつ、気になったところから意識しています。
――お話を聞いて、いかなる場面でも「言葉」に対して繊細な印象を受けました。
山崎:人から浴びせられた言葉に傷付いたり、発言が誤解されて自分が嫌になる経験があったからだと思います。神経質になり過ぎて疲れてしまうときも多いですけど、自分の性格が「言葉」の仕事でも生かせていると思いたいし、エッセイやラジオ、コメンテーターのお仕事でもプラスに働いたらいいなと思っています。
(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:山田健史)
『山崎怜奈の言葉のおすそわけ』はマガジンハウスより発売中。価格は1980円(税込)。