「サノスは愛を欲している」 マーベル・コミックス編集者が語る“魅力的な悪役”とは?
世界累計興行収入20億ドルを突破、日本でも興行収入37億円超えの大ヒットを記録した『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。ヒーローたちが抱えるドラマ、圧倒的なアクション、壮絶なクライマックスで全世界を魅了した本作のMovieNEX発売にあわせて、マーベル映画の原点でもあるニューヨークのマーベル・コミックス本社に潜入。シニア・バイスプレジデント兼、エグゼクティブ・エディターを務めるトム・ブレヴォートと、『ヴェノム』『パニッシャー』の担当編集者ジェイク・トーマスに、“魅力的なヴィラン”誕生の秘密を聞いた。
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最強のヒーローチームが、最凶最悪の“ラスボス”サノスに立ち向かう姿を描く『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。指をパチンと鳴らしただけで宇宙の半分の人口を消滅させてしまうパワーをもったサノスの登場は、観客にとっても衝撃的なものだった。
『アベンジャーズ』や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の原作に長年携わってきたトムは「サノスは、読者や観客の恐怖心を呼び起こす恐ろしいヴィランだ。マーベル・ユニバースの他のキャラクターとは大きく異なる存在」と特別なキャラクターであると分析。「人からすると“賛同はできないけれど、その考えや、やろうとしていることは理解はできる”という独自の観点を持っている。彼の持つレイヤー(層)のおかげで、ただ悪事を働くだけの悪役にはなっていないんだ」と語る。
シニア・バイスプレジデント兼、エグゼクティブ・エディターを務めるトム・ブレヴォート氏
サノスは「1972年に、アーティストでライターのジム・スターリン(Jim Starlin)が生み出したキャラクター」だそうで、哲学科に通っていたジムが精神分析用語の“タナトス”からキャラクターのコンセプトを当てはめていったという。「サノスは愛を欲しているキャラクター」だとも明かしたトムは「その点において読者は彼に共感ができるはずだ。やっていることは完全に怪物だけれどね」と彼の持つ多面性こそ、人々を惹きつける理由だと話す。
サノスに惹かれる理由は“多面性”だと話す (C)2018 MARVEL
次に話を聞いたジェイクは、スパイダーマンの宿敵で、マーベル史上最も“残虐な悪”といわれる人気キャラクター・ヴェノムの原作に携わっている。「ヴェノムは恐ろしくてダークで、スパイダーマンとは正反対のキャラクターなんだ。彼が持っているのは“恐れと怒り”。一方のスパイダーマンは、常にベストを尽くそうとして、たまに大失敗もするけど、全体的に見てよい考えを抱く思いやりのある人間だ。マーベルでは、同じユニバースの中でそんな二人が両立している」とニッコリ。
『ヴェノム』『パニッシャー』の担当編集者ジェイク・トーマス氏
さらに、「パニッシャーが私の一番のお気に入りのキャラクターなんだ」と孤高のダークヒーローと言われるキャラクターのパニッシャーにも言及し、「私たちがパニッシャーとキャプテン・アメリカが存在するユニバースを持っていることは本当に素晴らしいこと。良い面と悪い面を一緒に語れるなんて、魅力的なことだよ。他とはまったく異なるストーリーを語れるんだから。マーベル・ユニバースは非常にバラエティに富んでいるんだ」と光だけでなく闇も描くことで、より深いドラマを生み出せていることに胸を張っていた。
数々のキャラクター、ストーリーを世に送り出してきたアメコミ出版社のマーベル・コミックス社だが、自分たちが携わった作品が映画となって世界中で愛されていることについては、「とても楽しいことだ」という。トムは「こんなに楽しいことはないね。僕は『キャプテン・アメリカ』のバッキーを呼び戻したコミック『ウィンター・ソルジャー』も編集していたんだ。これも映画化されて、ストーリーは全く同じというわけではないけど、かなり近いものだった。クールだし楽しいことだったよ。映画を観てみると、そのアクションが好きになるし、楽しむことができる。いい映画を作るというのはとても難しいことだけれど、マーベル・スタジオの多くの映画がうまくいっている。これはとてつもない功績だ」と大きな笑顔で映画を称えていた。(取材・文・写真:成田おり枝)
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