<ロッキー・バルボアを愛した人々>エイドリアン、アポロ、ポーリー…そしてファン
バージェス・メレディス演じるミッキー(右) 映画『ロッキー』(1976)より 写真提供:AFLO
マイティ・ミックのボクシングジムのオーナートレーナーで、ロッキーのポテンシャルを引き出した人物。ガラガラ声と偏屈極まりない尊大な性格の持ち主だが、ロッキーを厳しく叱咤しながら家族のような存在となっていく(エイドリアンが出産時に意識不明になった時は最後まで付き添った)。1905年生まれで自身も戦前~戦後にかけてボクサーであったミッキーは、ロッキーに僥倖が訪れたときにマネージャー兼トレーナー役を申し入れ、すったもんだの末に合意。以降はロッキーを守ることを第一とする経験豊かなトレーナーとして常にロッキーに寄り添っていた。しかし後に、ミッキーが王座戦の対戦相手を選り好んでいたことを知ったロッキーを苦悩させることになる。心臓に病をかかえており、『ロッキー3』のサンダー・リップス戦で体調を崩し、最初のクラバー戦前にクラバーに押されて発作を起こしてそのまま帰らぬ人となった。享年76歳。
映画『ロッキー2』(1979)より 写真提供:AFLO
ミッキーを演じたのはベテランのバージェス・メレディス。テレビドラマ『バットマン』のペンギン役で知られた俳優。ハリウッドの赤狩りでブラックリストに載っていた時期もあったが、『イナゴの日』と『ロッキー』でアカデミー助演男優賞に2年連続でノミネートされて復権した。
ミッキーの元ネタは、5人の世界王者を生み出したユダヤ人トレーナーのチャーリー・ゴールドマンと、イタリア系トレーナーのカス・ダマト。
■トニー・“デューク”・エヴァース…いつもリングサイドで汗だくでアドバイスを送る名トレーナー
トニー・バートン演じるデューク(中央) 映画『ロッキー2』(1979)より 写真提供:AFLO
アポロのマネージャー兼トレーナーとして、対戦検討時点からサウスポーのロッキーを警戒するなど、常にアポロを心配していた。再戦には断固反対の立場を貫き、ロッキーの驚異的な打たれ強さと闘志に警鐘を鳴らしている。アポロ引退後は地元ロサンゼルスのスラムでタッチ・ジムを再開し、トラの眼を持つ原石たちをトレーニングしていた。アポロに頼まれてロッキーにハードトレーニングを課し、クラバーへのリベンジを成功させる大きな原動力となった。『ロッキー4』でアポロがドラゴに殺されてからはロッキーのトレーナーとして共にソ連に渡り、ポーリーと共にロッキーのセコンドに付いてドラゴ撃破を成し遂げた。そして引退したロッキーが現ヘビー級王者メイソン・ディクソンと対戦する際は、当たり前のようにロッキーのトレーナーを引き受け、勝機は“メガトンパンチ”にありとして、ロッキーを鍛えなおした。なお『クリード』シリーズにはトニーの息子トニー・“リトル・デューク”・エヴァースJr.が登場している。
“デューク”を演じたのはトニー・バートン。アマチュアボクシングのミシガン州王者であり、アメフトの選手としても最優秀選手に選出される活躍を見せた(ついでに野球でも才能を発揮していたという)。その後道を踏み外して強盗の罪で3年間服役した際に更生プログラムで演技出会い、出所後は俳優の道を歩んでいる。またチェスプレイヤーとしても有名で、『シャイニング』の現場でスタンリー・キューブリック監督とチェスをして撮影を忘れさせるほどのめり込ませた逸話を持つ。
■トニー・ガッツォ…冴えない前座ボクサーのロッキーを気に入り、何かにつけて面倒を見ていた人物
ジョー・スピネル演じるガッツォ 映画『ロッキー』(1976)より 写真提供:AFLO
ガッツォはフィラデルフィアの高利貸し(ローン・シャーク)で、暴力を伴う取立人としてロッキーを雇っていた。ガッツォは底辺時代のロッキーに敬意をもって接していた数少ない一人であり、ロッキーのよき理解者でもあった。ロッキーの結婚式にも出席している。
ガッツォを演じたのは悪役俳優ジョー・スピネル。友人であるスタローンが自身の企画『ロッキー』でブレイクしたのを真似て『マニアック』を製作。興行的には『ロッキー』のようにはいかなかったが、タイトル通りマニアに高い評価を受ける作品として今なお人気を集める。