『異端の鳥』ステラン・スカルスガルドら5人の“国際派いぶし銀オールスターズ”にしびれる
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映画『異端の鳥』より、主人公の少年が旅路で出会う男たちを演じる、ステラン・スカルスガルド、バリー・ペッパーら“国際派いぶし銀オールスターズ”5人のインタビューを収めた特別映像が解禁された。
【写真】バリー・ペッパー、ステラン・スカルスガルドら5人の“国際派いぶし銀オールスターズ”劇中カット
本作は、第2次大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるため1人で田舎に疎開した少年が、差別と迫害にあらがいながら強く生き抜く姿と、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”を赤裸々に描く。
戦争の影が色濃くなり、ひとりで田舎に疎開したいたいけな少年(ペトラ・コトラール)は、預かり先の叔母が病死したことで、「家に帰る」という強い願いを胸に、圧倒されるような大自然の中をさまよいながら、村から村へと流浪の旅に出る。その行く先々の場所で出会うのが、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、ウド・キアー、バリー・ペッパーが演じる、さまざまな立場の大人たち。
『プライベート・ライアン』などで知られるバリー・ペッパーが演じるのは、ソ連軍の狙撃兵のミートカ。寡黙でとっつきにくい性格だが、少年に親近感を覚えたのか何かと面倒を見る優しさを見せる。特別映像でペッパーは「少年と彼が出会う人々の物語。胸を打たれる物語だ。少年を虐待する者もいれば助ける者もいる」と本作を紹介。さらに「“異端の鳥”としての少年を描いている」と、映画のテーマの“核”にも言及する。
名作映画への出演も数えきれない演技派ハーヴェイ・カイテルが演じるのは、命の危険が迫っていた少年を助ける心優しい司祭。しかし彼は病に冒され、余命いくばくもない。「これは何度も繰り返し伝えられるべき物語」と力説するカイテルは、本作で使用されている人工言語スラヴィック・エスペラント語に挑戦。監督によると、この言語を使った出演者の中で最も苦戦したのがカイテルだったという。カイテルは自分が口にする言葉について「意味も分からない。そんな経験をする俳優も珍しいだろ」と笑う。
近年ラース・フォン・トリアー作品への出演が続くウド・キアーが演じるのは、少年が身を寄せることになる粉屋のミレル。働き者だが嫉妬深く、若い妻と同居する作男の不倫を疑い、日増しにその疑念が肥大化していた。キアーは「人は嫉妬心から人を殺すこともある」と演じるミレルが抱く感情の行く末をほのめかす。映像にはミレル最大の“見せ場”ともいえる迫力の“ちゃぶ台返し”シーンも収録されている。
ミステリアスな風貌を生かし、過去120以上もの役柄を演じてきたジュリアン・サンズが演じるのは、司祭(カイテル)に助けられた少年を引き取ることになる農夫ガルボス。表の顔こそ敬けんな信者だが、その裏で弱き者を手にかける異常者という役どころ。演じる役柄について、サンズは「とても気性の荒い性格をしている。無骨な男なんだ。非常な面があり、サディスティックでもある。悪いことをして楽しんでる」とガルボスが隠し持つ一面について語る。
アート系から大作まで幅広く出演し、北欧が生んだ“最強一家”の父でもあるステラン・スカルスガルドが演じるのは、ナチスの年老いた兵士ハンス。少年が送られてきたドイツ軍の駐屯地で、ナチスの将校から少年の射殺を命じられる。スカルスガルドは「どんな人間も善と悪のどちらかに分けるのはよくない。人にはいろんな面があるんだ。環境や生い立ちが影響するものだしね」と、本作に登場する全ての人物にも通じる“人間の心理”についてコメント。ハンスが軍人としての“任務”を果たしたのかについては、「映画のチケットを買えば、少年を撃ったかどうか分かる」と笑顔ではぐらかしている。
俳優として何十年ものキャリアを持ち、国際的に活躍する彼らのいぶし銀の演技が、モノクローム映像の中で存在感たっぷりに発揮される本作。今回公開された特別映像には5人の劇中シーンも一部収録。公開を前にその魅力にしびれてみるのはいかがだろう。
映画『異端の鳥』は10月9日より全国公開。