直木賞作家・井上荒野の同名小説を、主演・寺島しのぶ、監督・廣木隆一で実写化した映画『あちらにいる鬼』より、場面写真が公開された。

　原作小説は、井上荒野の父である作家・井上光晴と母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、男女3人の特別な関係を描いた作品。

　昨年11月、満99歳で波乱の人生を全うした作家・僧侶の瀬戸内寂聴。1960年代から人気作家・瀬戸内晴美として活躍した彼女が出家した背景には、同業者で妻子ある井上光晴との恋があった。出会うべくして出会い、互いにのめり込んでいく2人と、全てを承知しながら心を乱すことのない男の妻。同志にも共犯にも似た不思議な3人の関係を、光晴の長女・井上荒野がセンセーショナルな物語に書き上げた。

　文学に導かれ、求め合う主人公・長内みはる、後の寂光役に寺島。井上光晴をモデルとした白木篤郎を豊川悦司。白木の妻・笙子を広末涼子が演じる。

　みはるの元旦那の教え子かつ年下の恋人・真二役は高良健吾が演じる。みはると真二は近いうちに別れが来ることを予感しながら、お互い惰性で過ごしているような関係。廣木組では『軽蔑』や『彼女の人生は間違いじゃない』に出演してきた高良が、色気と虚しさの同居した繊細な演技を魅せる。

　公開された場面写真は2点。1点目には、みはると真二の棲む家に、そこはかとなくみはるに惹かれている篤郎が突然訪ねてくる様子が。向かい合って座る、みはると篤郎。そんな2人に対して斜に構える真二の姿から、彼らの人生がこれから交差していくことを予感させる。

　2点目に写し出されているのは、篤郎とその妻・笙子（広末）が寄り添って歩く場面。妻は料理が上手いと絶賛し、自身の編集担当には彼女の書く文章は素晴らしいと太鼓判を押す一方で、みはるにアプローチをかける篤郎。奔放な旦那の様子を見守りながら内に熱い気持ちを秘めた笙子。この時、2人の心ではどのような感情が渦巻いているか、はたまた渦巻く感情自体あるのだろうか。

　映画『あちらにいる鬼』は、11月11日より全国公開。