宮本信子、夫・伊丹十三監督の言葉で続けられた女優業「あなたはいい女優なんだよ」
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■監督、そして夫として女優・宮本信子を支え続けた伊丹十三さん
プライベートでは夫婦、作品に出演しているときは監督と女優という関係性。宮本は、仕事とプライベートはかっちりと分けたいタイプと語っていたが、「なかなか難しい部分はありましたね」と笑う。
現場での伊丹監督はとにかく熱い。「本当についていくのに一生懸命。とても厳しく女優として育てていただきました。私だけではなく伊丹組の俳優さんたちはみなそうでしたが、とにかく監督からOKをもらわなければいけない。決して楽しいことばかりではなかったですが、クランクアップしたときの達成感はほかの現場では味わえないものでしたね」と当時を振り返っていた。
デビュー以来、半世紀以上の年月が流れた。近年でも連続テレビ小説『あまちゃん』や『ひよっこ』などに出演し、お茶の間で人気を博しているが「私は家庭を持っていたこともあり、どっぷりと業界にいるという感覚ではないんです」と語る。実際、結婚、出産後はしばらくのブランクがあった。
「子どもを産むということは、子どもを育てるという責任があると思っていたんです。自分自身のなかで、家庭と仕事の優先順位はしっかり持っていたので、必然的な流れでした。もちろん同世代の人が活躍しているのを見て心に思うこともありましたが、そこでお仕事がなくなっても、それは仕方ないことだと割り切っていましたね」。
揺れることなく自身の思いを貫き通せたのも伊丹監督のおかげだと言う。「私たちの出会いは職場でしたが、いつも伊丹さんは『あなたはいい女優なんだよ』と言ってくれました。その言葉があったから、ぐらぐらせずに済んだんでしょうね」。
宮本の人生に非常に大きな影響を与えてくれた伊丹監督がつないでくれた『STAND BY ME ドラえもん 2』への出演。新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開が延期されていたが、11月20日、無事に初日を迎えた。「たくさんの子どもたちと一緒に劇場で観たい」という宮本の思いから、映画公開まで観賞することを封印していたという。「とにかく素敵な世界観を堪能したいし、皆さんにも楽しんでいだだけたら」とメッセージを残してくれた。(写真:高野広美)