池田純矢映画レビュー

明けましておめでとうございます。旧年は格別の御厚情を賜り、誠に有難うございます。こうして新たな年を迎えても、この何でもない連載が続けられるのはひとえに皆々様のお陰でございます。大した事は出来ませんが、それでもほんの少しのスパイスとして、映画と皆様とを繋ぐ事ができれば僕はもう、それだけで至上の喜びです。

お休みの後の仕事と言うのは憂鬱めいた感情を抱かざるを得ないですよね。まるで繰り返し月曜日がやってくるような、ずしりとした倦怠感に襲われます。いやしかし、それならばずっとお休みであれば良いのか?と言うと、それもまた別の話でございまして、要は何事もバランスが大事だと言う事。本日は、そんな人生に於いての”バランス”を教えてくれて、それでいて年明けの陽気な雰囲気に相応しいハッピーなコメディ作品をご紹介したいと思います。 さて、2018年も年が変わり数日が過ぎ、いくらか正月気分も抜けて来た頃合いでしょうか。

ペイトン・リード監督作、主演ジム・キャリーで2009年に日本公開されたアメリカン・コメディ『イエスマン”yes”は人生のパスワード』


◆ すべてが「NO」だった男が、すべてが「YES」に

 仕事でもプライベートでも、事ある毎に「no」と答え、親友の結婚式でさえすっぽかしてしまうどこまでも後ろ向きな男カール・アレン(ジム・キャリー)はある日、とあるきっかけから自己啓発セミナーに参加する事に。そこで、幸運を手に入れる為にはいついかなる時でも「yes」と答える事だ。と言う教えを受け、その日以来どんな事にも「yes」と答えるカール。そんな彼と偶然出会ったアリソン(ズーイー・デシャネル)は、そのユーモラスでハッピーな生き方に惹かれていくが…

◆ ジム・キャリー主演作の中でも“バランス”が良い

 『マスク』や『ブルース・オールマイティ』など、アメリカン・コメディの代表として誰もが知るジム・キャリー。数ある彼の主演作の中でも本作は極めて“バランス”の良い作品だと断言したい。
コメディ作の名に恥じぬ、常に笑いとともに展開するストーリーでありながら、恋愛あり、友情あり、更には人生訓に至るまで、随所にこれでもか!と、ふんだんに物語の軸が詰め込まれている。しかもその要素のひとつひとつが、その一本軸でも完成出来るほどの密度で描かれているのは圧巻の一言。

 第5回レビュー作品 
ジム・キャリー主演
『イエスマン”YES”は人生のパスワード』


イエスマン”YES”は人生のパスワード

親友の婚約パーティーまですっぽかし「生き方を変えない限り、お前はひとりぼっちになる」と脅されたカールは、勇気を振り絞り、とあるセミナーに参加。
“意味のある人生を送るための、唯一のルール”は、全てのことに、それがどんな事であっても「イエス」と言うだけ。  仕事にもプライベートにも「ノー」「嫌だ」「パス」と答える極めて後ろ向きの男、カール・アレン(ジム・キャリー)。

◆ ぶっ飛んだカップルの行方も手に汗握るように…

 特に、ズーイー・デシャネル演じる、主人公と惹かれ合うヒロインのキャラクターが常軌を逸している。いわゆる清廉で可憐なヒロイン像とは真逆で、あまりにも飛び道具的な性質にも関わらず、不思議なほどに愛らしく、いじらしく感じさせてくれるのだ。そんな彼女と、どんな事にも「yes」を連発する奇想天外な主人公の恋愛模様が、全くもってフィクション以外の何物でも無いはずなのに、いつの間にか手に汗握り、その行く末をハラハラと見守りたくなってしまう。

◆ 実はとんでもない映画だった!?

 もちろん、その一点だけでもとても良質な恋愛映画になり得る上、更にはブラッドリー・クーパー演じる親友との堅い絆も美しく、はたまた幸運とは?人生とは?と深く考えさせてもくれる。それが全て“コメディ”の上に成り立っていると言うのは、これはもう、とんでもない事なのである。

いくつもの要素が、まるで奇跡のように重なり、研ぎ澄まされたエピソードが綺麗に無駄なく美しく物語に収束していく様は、映画というエンターテイメントであり娯楽が、芸術と呼ばれる所以なのかも知れない、と、ふと思わせてくれた、そんな作品です。

答えはもちろん…「yes」
笑って泣けて、愛しくなって、もどかしくて、そしてやっぱり笑って、ハッピーになれる。新年一作目はそんな映画ではじめてみませんか?

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  • 『イエスマン”YES”は人生のパスワード』

    制作年:2008年/本編時間:104分
    SD(標準画質)/字幕:300円(税別)/48時間

池田純矢プロフィール

2018年4月に紀伊國屋ホール、5月に大阪abcホールにて第3弾『エン*ゲキ#03 ザ・池田屋!』を上演予定。 スター☆ピープルズ!!』を24歳にして紀伊國屋ホールで上演。 本格的な演出家デビューを飾る。 2006年junonスーパーボーイコンテストで史上最年少準グランプリを獲得し、ドラマ『わたしたちの教科書』、映画『dive!!』で俳優デビュー。その後『海賊戦隊ゴーカイジャー』や『牙狼〈garo〉~闇を照らす者~』などで見られるアクションにも定評がある。近年は舞台での活躍も増え、「ミュージカル『薄桜鬼』~藤堂平助篇~」『リチャード3世』等では座長を務めた。また企画・構成・脚本・演出を手掛ける「エン*ゲキ」シリーズを立ち上げ、『エン*ゲキ#01 2017年に第2弾となる『エン*ゲキ#02 君との距離は100億光年』を上演。